ブログ「公務員ってどうなの?」のこむぞうです。
今回は、時間外勤務(いわゆる残業)の上限についてお話したいと思います。こちらの記事で公務員の時間外勤務があると知って不安になった方は、ちょっとだけ安心してください。
「定時で帰る」っていうイメージはなくなったけど、上限があるならブラック企業ほどのことはなさそうだね。
それについては、自治体と配属先にもよるかな。何にせよ、自分を大切にするためにも是非この記事で時間外勤務の上限ルールを知ってもらいたいな。
原則として1か月当たり45時間
企業であれば、労働基準法第36条第4項に次のルールがあります。
前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
労働基準法(昭和22年法律第49号)第36条第4項
もちろんいわゆる36協定が締結されていることが前提です。
一方、国家公務員にも人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第16条の2の2第1項第1号イに次のルールがあります。
一箇月において超過勤務を命ずる時間について四十五時間
人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第16条の2の2第1項第1号イ(1)
一年において超過勤務を命ずる時間について三百六十時間
人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第16条の2の2第1項第1号イ(2)
地方公務員の勤務時間は、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第24条第5項の規定により、条例で定めることになりますので自治体により様々な取扱いが可能ですが、同条第4項と同法第14条第1項(情勢適応の原則)にあるように、国と世の中のルールを踏まえることになりますので、結局同じになる傾向にあります。
つまり、地方公務員の時間外勤務は、原則として
- 1か月当たり45時間
- 1年当たり360時間
が上限となります。
みんなと同じなんだ。普通って感じ。
そうとは限らないさ。では、この次では公務員特有のルールを紹介しよう!
時間外勤務の上限を超えて行うことになる時間外勤務(特例業務)もある。
時間外勤務(国家公務員の場合は、「超過勤務」といいます。)の上限があるとはいえ、公務員が「時間外勤務の上限なので、これ以上仕事しません。」といって働かなくなったら世の中は大変ですよね。そういうわけで、国家公務員には次のルールがあります。
各省各庁の長が、特例業務(大規模災害への対処、重要な政策に関する法律の立案、他国又は国際機関との重要な交渉その他の重要な業務であって特に緊急に処理することを要するものと各省各庁の長が認めるものをいう。以下この項において同じ。)に従事する職員に対し、前項各号に規定する時間又は月数を超えて超過勤務を命ずる必要がある場合については、同項(当該超えることとなる時間又は月数に係る部分に限る。)の規定は、適用しない。人事院が定める期間において特例業務に従事していた職員に対し、同項各号に規定する時間又は月数を超えて超過勤務を命ずる必要がある場合として人事院が定める場合も、同様とする。
人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第16条の2の2第2項
つまり、こういうことです。
災害等の場合は、特例業務という取扱いに位置付けて時間外勤務の上限を超えて時間外勤務をしてよいということです。これは、もちろん地方公務員も同じことです。
なお、特例業務でない時間外勤務内容で時間外勤務の上限を超えることは、もちろん法令等の規定に違反します。
なお、この特例業務を行った場合、これを行って時間外勤務の上限を超えることになった要因分析をすることとなります。国家公務員では、次のとおり義務付けられていますね。
各省各庁の長は、前項の規定により、第一項各号に規定する時間又は月数を超えて職員に超過勤務を命ずる場合には、当該超えた部分の超過勤務を必要最小限のものとし、かつ、当該職員の健康の確保に最大限の配慮をするとともに、当該超過勤務を命じた日が属する当該時間又は月数の算定に係る一年の末日の翌日から起算して六箇月以内に、当該超過勤務に係る要因の整理、分析及び検証を行わなければならない。
人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第16条の2の2第3項
結構大変じゃない?これ
ちゃんと日々の時間外勤務がどうして必要だったかを整理していないといけないからね。もちろん大変だ!
具体的な事務は、このように定められています。
16 規則第16条の2の2第3項に規定する超過勤務に係る要因の整理、分析及び検証(次項において「整理分析等」という。)を行うに当たっては、上限時間等を超えて超過勤務を命ぜられた職員について、少なくとも、所属部署、氏名、特例超過勤務を命じた月又は年における超過勤務の時間又は月数及び当該月又は年に係る上限時間等、当該職員が従事した特例業務の概要並びに人員配置又は業務分担の見直し等によっても同条第2項の規定の適用を回避することができなかった理由を記録しなければならない。
職員の勤務時間、休日及び休暇の運用について(平成6年7月27日職職-328)第10の第16項
文字だらけで見にくいので整理すると、次の内容を記録しなければならないとされています。
- 所属部署、氏名、特例超過勤務を命じた月又は年における超過勤務の時間又は月数及び当該月又は年に係る上限時間等
- 当該職員が従事した特例業務の概要
- 人員配置又は業務分担の見直し等によっても同条第2項の規定の適用を回避することができなかった理由
この前、時間外勤務をやらせた人にこの整理分析等の記録の話をしたら文句を言われたんだよね。
そうそう。「選挙のことなんかうちの業務じゃないのにそれを含めて分析させるなんておかしい」とかな。「うちの上限って何だっけ」という人もいたよ。少数派だと思いたいけどね。
過労死・・・過労で自殺をした人もいるからこの制度ができたんじゃないのかな?命に関わることだよね?やらせっぱなしであってほしくないね。部下から「辛い」って言われなきゃ分からないのかな?リヴァイ兵長にうなじを切られてしまえばいいよね(TVアニメ「進撃の巨人」 Season3 6(初回限定版)【Blu-ray】 [ 梶裕貴 ])
過激なことを・・・。
もちろん国家公務員ではこのように定められていますので、地方公務員も同様の措置が必要です。
17 各省各庁の長は、適切に情報を収集した上で、整理分析等を行うものとする。
職員の勤務時間、休日及び休暇の運用について(平成6年7月27日職職-328)第10の第17項
18 各省各庁の長は、業務量の削減又は業務の効率化に取り組むなど、超過勤務の縮減に向けた適切な対策を講ずるものとする。
職員の勤務時間、休日及び休暇の運用について(平成6年7月27日職職-328)第10の第18項
時間外勤務をやらせっぱなしじゃなく、対策をしなきゃだめ!ってことだね。
部下を守る体制づくりが必要だからね。部下から「もう辛いので時間外勤務をできません。」なんて言えない。毎回の時間外勤務が本当に必要なのか上司が考えることが必要なんだ。
配属部署によって上限が違う。
企業には、労働基準法第36条第6項で上記の原則より上限が多く設定されることがあります(1か月当たり100時間未満等)。
同様に、国家公務員には、人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第16条の2の2第1項第2号で、他律的業務(業務量、業務の実施時期その他の業務の遂行に関する事項を自ら決定することが困難な業務をいう。)の比重が高い部署として各省各庁の長が指定するものに勤務する職員について次の上限が認められます。
- 1箇月において超過勤務を命ずる時間について100時間未満
- 1年において超過勤務を命ずる時間について720時間
- 1箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の1箇月、2箇月、3箇月、4箇月及び5箇月の期間を加えたそれぞれの期間において超過勤務を命ずる時間の1箇月当たりの平均時間について80時間
- 1年のうち1箇月において45時間を超えて超過勤務を命ずる月数について6箇月
国家公務員にこのようなルールがあるため、地方公務員も多くの場合、このルールを採用する傾向にあります。
しかし、時間外勤務の上限ルールは、理解されない・・・。
以上が時間外勤務の上限ルールです。
しかし、説明してもなかなかこのルールが理解されません。「特例業務は、どんな業務が当たるのか。」とか「「他律的業務」とは何か」とか。
特に「特例業務」については、国家公務員は具体例を挙げていますが、地方公務員については業務が様々なのでどの業務が「特例業務」の定義に当てはまるか判断する基準が何もありません。時間外勤務の上限を超えてでも仕事をしなければいけない状況は多いため、きっと自治体によって特例業務とする内容は、様々なのでしょうね。
どうしても間に合わせなきゃいけないから時間外勤務をするのに、それが特例業務かどうかなんて区別が付かないよね。というか、時間外勤務は全部特例業務に思えるよ!
「他律的業務」にも困ったもので、自治体の仕事なんて、ほとんど自分じゃコントロールのできない業務ばかりだから、全部「他律的業務」のような気がしてしまうよ。
でも一歩立ち止まって、時間外勤務をすべきかどうかを考える切っ掛けにはなるかな。
時間外勤務手当等の関連リンク
時間外勤務をした場合、給与にどう反映されるか気になりますよね。時間外勤務手当等の計算方法についてリンクを張っておきます。興味のある方は、こちらも御覧ください。
終わりに「長時間勤務の負担を軽減するアイテム「オーダースーツ」」
スーツで勤務しているあなたに知ってもらいたい話です。
実はスーツって、結構疲れるんですよね。私なんて、動きにくいのですぐ上着を脱ぎます。
寒い日だと上着を着たり脱いだりの繰り返しです。
しかし、オーダースーツになると、ずっと着ていても全然疲れません。「既製品とオーダースーツ、こんなに違うものか」と思い知ります。
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店舗はもちろん、出張オーダーで採寸してもらうことができます。
料金は、33,000円から。私もオーダースーツを持っていますが、あのときは安くて5万円以上でした。
リーズナブル!
知ってたら、ここを利用したのに・・・。
スーツの寿命は、3年から5年まで。結構長持ちしますので、将来を見据えればいい買物です。
通常の勤務でも休憩時間を含めて8時間を超えて着続けるわけですから、体にフィットしていないスーツではやはり疲れます。
オーダースーツは、あなたを助けてくれますので、是非利用してみてください。
コメント
こんにちは。
大変参考になります。私は国家公務員です。時間外労働について、一つ質問があります。
例えばですが、月曜日は有給を取得して、火曜日~金曜日、毎日2時間残業した場合。
この週の勤務時間は39時間となりますが
残業申請は0時間になるのでしょうか?それとも8時間になるのでしょうか?
有給休暇を取得した際の時間外労働の申請時間を教えて下さい。
御質問をありがとうございます!
結論からいえば、8時間の時間外勤務です(1日2時間×4日)。
勤務日における時間外勤務は、1日当たりの勤務時間を超過した時間となります。
なお、1週間当たりの勤務時間を超過した時間外勤務は、次の5パターンのいずれかで勤務した場合でに考えることとなります。
・週休日
・祝日法による休日
・年末年始の休日
・週休日の振替等(週休日に勤務した分、勤務日を休みにした日)
・休日の代休日(祝日や年末年始の休日に勤務した分、勤務日を休みにした日)
おまけの話ですが、有給休暇は、働いてなくとも勤務した扱いとなりますので、その週の勤務時間は、1日当たり7.75時間×5日+時間外勤務8時間=46.75時間です。ただし、この例の時間外勤務は、1日当たりの正規の勤務時間を超過した分として考えることとなるため、1週間当たりの勤務時間(38.75時間)を超えた分として時間外勤務を考えません。
以上のことは、時間外勤務手当の計算で使う時間外勤務時間数と同じです。
いかがでしょうか?ほかにも何かありましたらどうぞ御質問ください。