ブログ「公務員ってどうなの?」のこむぞうです。
令和6年5月31日、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)及び次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)を改正する法律が公布されました。
この法律は、一般の労働者向けの話をしていますが、公務員にも大きく影響があります。
働き方が大きく変わる見込みがあります。条例や規則の改正も必要となってきます。条例、規則等の改正担当及び人事担当向けにしっかりお伝えしますので、是非御覧ください。
- 法改正の概要
- 施行期日が令和7年4月1日のもの
- 【規則改正】子の看護休暇は、子の看護等休暇に改正される。
- 【規則改正】任用期間6か月未満の会計年度任用職員を短期の介護休暇の対象とする。
- 【規則改正】子の参観のための休暇は、継続か、廃止かを決める。
- 【条例】【規則】育児をする職員の時間外勤務の制限期間を延長する。
- 介護両立支援制度等の周知及び介護両立支援制度等申出の意向確認に関する措置が義務付けられる。
- 40歳到達年度等に介護両立支援制度等を知らせることが義務付けられる。
- 長期の介護休暇の申出が円滑に行われるようにする措置が義務付けられる。
- 介護両立支援制度等申出が円滑に行われる措置が義務付けられる。
- 3歳未満の子を養育する労働者のために在宅勤務等の措置が義務付けられる。
- 介護労働者のために在宅勤務等の措置が努力義務とされる。
- 施行期日が政令で定める日(令和7年10月1日)からのもの
- 施行期日が育児・介護休業法等改正法の公布の日からのもの
- 最後に
法改正の概要
まずは条例改正等の原因(立法事実)となる法改正から御説明します。
- 公布の日 令和6年5月31日
- 施行期日 令和7年4月1日のほか、公布の日及び同日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日(令和7年10月1日)
政令で定める日は、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(令和6年政令第280号)が令和6年9月11日に公布されたことで決まったよ。
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則及び雇用保険法施行規則の一部を改正する省令(令和6年厚生労働省令第124号。以下「改正省令1」という。)
- 公布の日 令和6年9月11日
- 施行期日 令和7年4月1日
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則及び雇用保険法施行規則の一部を改正する省令(令和6年厚生労働省令第125号。以下「改正省令2」という。)
- 公布の日 令和6年9月11日
- 施行期日 令和7年10月1日
地方公務員が注目すべきなのは、次の2本の改正です。
さっき言っているけど、改めてもう一度!
ほかにも影響を受けるものはありますが、整理しているだけなので、省略します!
では、施行期日ごとに説明します。
施行期日が令和7年4月1日のもの
施行期日が令和7年4月1日の法改正が条例と規則に最も早く影響しますので、こちらから説明します。
【規則改正】子の看護休暇は、子の看護等休暇に改正される。
現行の制度では、小学校就学の始期に達するまでの子(小学校入学前の子)を育てている地方公務員は、子の看護休暇を取得することができます(育児・介護休業法等改正法第1条の規定による改正前の育児・介護休業法(旧育児・介護休業法」という。)第61条第11項において読み替えて準用する同条第7項)
会社員にも子の看護休暇はあるよね(旧育児・介護休業法第16条の2第1項)。
国家公務員にも子の看護休暇はあるね(人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇)第22条第1項第11号)。
地方公務員の場合は、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第24条第5項の規定により条例で勤務時間その他の勤務条件を定めることとされており、その条例が規則で定める場合に規則で定める期間の特別休暇を取得することができるとしていることが多いと思われます。
つまり、地方公共団体の規則において子の看護休暇を特別休暇として定めている事例が多いと思われます。
さて、その子の看護休暇ですが、令和7年4月1日から改正し、育児・介護休業法等改正法第1条の規定による改正後の育児・介護休業法(以下「第1条育児・介護休業法」という。)第61条の2第6項から第9項までにおいて地方公務員の「子の看護等休暇」を定めることとなりました。
現行の子の看護休暇は、次のように改正されて子の看護等休暇となります。
- 子の看護等休暇における「子」の範囲を小学校3年生までに拡大する(現行の子の看護休暇は、小学校就学前までの子の看護が対象)。
- 入園式等の子の行事参加等の場合も取得可能とする。
- 任用期間6か月未満の職員も取得することができることとする(現行の子の看護休暇は、任用6か月以上の会計年度任用職員等の非常勤職員に限定している。)。
この点について、いわゆる勤務時間規則(会計年度任用職員にも別で規則を定めている場合は、会計年度任用職員の勤務時間規則を含む。)等の改正が必要となります。
人事院規則15-14第22条第1項第11号及び人事院規則15-15(非常勤職員の勤務時間及び休暇)第4条第2項第2号と同様の規定が勤務時間規則にあると思いますので、確認し、改正しましょう。
自治体によって定め方はいろいろあるから、条例も確認してね。
条例改正は、議会に提出する必要があります、議案の提出期限をしっかりと確認しておきましょう。
チェックポイント
勤務時間規則で定めている子の看護休暇を子の看護等休暇に改正する(条例も確認。会計年度任用職員については、任用期間6か月未満の会計年度任用職員も対象とすることを忘れずに。)。
【規則改正】任用期間6か月未満の会計年度任用職員を短期の介護休暇の対象とする。
会計年度任用職員の介護休暇は、期間の長さ等により2種類あります。
ちなみに「長期の」「短期の」というのは、法令等にはどこにも書いてないよ。分かりやすく表示するために勝手に付けたの。
公務員の介護のための休暇は、長い期間の休暇も「介護休暇」と呼んでいるんですよね・・・。
地方公務員では「介護休業」ではなく「介護休暇」という理由
多くの自治体職員が家族を介護するための長い休暇は、「介護休暇」となっていると思います。
これは、育児・介護休業法よりも先に地方公務員がこの介護のための長期休暇の制度を作ってしまったためです。
まず平成6年に国家公務員が一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律(平成6年法律第33号)の一部改正をすることで導入し、地方公務員も条例で定めました。平成7年に民間労働者にも育児・介護休業法の一部改正がされることで導入されることとなりましたが、このときに地方公務員の介護休暇(介護休業)だけ法律上の根拠がないことにならないよう育児・介護休業法に定めることとなりました(条例は、法律より下位の法とされていますので、この点がアンバランスになるおそれがあったのです。)。
そのため、地方公務員の介護休暇の直接の根拠は、条例によることとなり、育児・介護休業法は、最低基準に過ぎないという位置付けになりました。
したがって、第1条育児・介護休業法第61条の2第3項(旧育児・介護休業法第61条第6項において読み替えて準用する同条第3項)で地方公務員に関する特例の介護休業が定められているものの、「介護休業」という名称ではなく「介護休暇」が使われたり、ちょっとだけ制度も違ったりするのです。
特に短期の介護休暇を定める旧育児・介護休業法第61条第16項において読み替えて準用する同条第12項は、次のようになっています。
12 行政執行法人の職員(国家公務員法第六十条の二第一項に規定する短時間勤務の官職を占める者以外の常時勤務することを要しない職員にあっては、第十六条の六第二項において準用する第六条第一項ただし書の規定を適用するとしたならば第十六条の六第二項において読み替えて準用する第六条第一項ただし書各号のいずれにも該当しないものに限る。)は、地方公務員法第六条第一項に規定する任命権者又はその委任を受けた者(地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)第三十七条第一項に規定する県費負担教職員については、市町村の教育委員会。第十五項において同じ。)の承認を受けて、当該職員の要介護家族の介護その他の第十六条の五第一項の厚生労働省令で定める世話を行うため、休暇を取得することができる。
旧育児・介護休業法第61条第16項において読み替えて準用する同条第12項
旧育児・介護休業法第16条の6第2項は、旧育児・介護休業法第6条第1項ただし書を読み替えて準用することとなっています。同項を読み替えると次のようになります。
第六条 事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。ただし、当該事業主と当該労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定で、次に掲げる労働者のうち育児休業をすることができないものとして定められた労働者に該当する労働者からの育児休業申出があった場合は、この限りでない。
旧育児・介護休業法第6条第1項(旧育児・介護休業法第16条の6第2項において準用する。)
一 当該事業主に引き続き雇用された期間が六月に満たない労働者
旧育児・介護休業法第16条の6第2項において読み替えて準用する旧育児・介護休業法第6条第1項第1号
二 前号に掲げるもののほか、育児休業をすることができないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの又は業務の性質若しくは業務の実施体制に照らして、第十六条の五第二項の厚生労働省令で定める一日未満の単位で介護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者(同項の規定による厚生労働省令で定める一日未満の単位で取得しようとする者に限る。)
旧育児・介護休業法第16条の6第2項において読み替えて準用する旧育児・介護休業法第6条第1項第2号
下線は、読み替えられた部分だよ。
準用することにはなっているので、読み替える指定がなくても「事業主」を「任命権者等」と、「行政執行法人の職員」を「会計年度任用職員」とするなど各自で読み替える必要があります。
つまり、旧育児・介護休業法では、任用6か月未満の会計年度任用職員は、短期の介護休暇を取得することができないということになります。
しかし、令和7年4月1日から地方公務員の短期の介護休暇を定める第1条育児・介護休業法第61条の2第10項では、任用期間がどのような会計年度任用職員でも短期の介護休暇の対象となります。
10 地方公共団体等の職員(短時間勤務職員以外の非常勤職員にあっては、第十六条の六第二項において準用する第六条第一項ただし書(第二号に係る部分に限る。)の規定を適用するとしたならば第十六条の六第二項において読み替えて準用する同号に該当しないものに限る。第十二項及び第十三項において同じ。)は、任命権者等の承認を受けて、当該地方公共団体等の職員の要介護家族の介護その他の第十六条の五第一項の厚生労働省令で定める世話を行うため、休暇を取得することができる。
第1条育児・介護休業法第61条の2第10項
なお、非常勤の国家公務員に係る短期の介護休暇は、人事院規則15-15第4条第2項第3号に定められています。この改正状況も考慮して会計年度任用職員の規則整備をしましょう。
チェックポイント
会計年度任用職員の短期の介護休暇(5日)について、6月に満たない会計年度任用職員も対象とする改正を行う。
【規則改正】子の参観のための休暇は、継続か、廃止かを決める。
子の看護等休暇は、入園式等の子の行事参加等の場合も取得可能とされています。
では、現行の制度で既に入園式等の場合に取得することができる休暇「子の参観休暇」がある場合、子の参観休暇を継続すべきか、廃止すべきか検討する必要があります。
愛知県人事委員会は、職員の勤務時間、休日及び休暇に関する規則(昭和42年愛知県人事委員会規則6-0)第4項第5号ハにおいて、「子(配偶者の子を含む。)の在籍する学校等が実施する行事であつて任命権者が人事委員会と協議して定めるものに出席する場合」に特別休暇を取得することができることとし、子(配偶者の子を含む。)の参観のための休暇を定めています。なお、参観内容は、愛知県人事委員会が次のように定めています。
- 義務教育諸学校等が実施する授業参観(運動会、学芸会その他学習活動を参観する趣旨のものを含む。)
- 義務教育諸学校等が実施する入学式
- 義務教育諸学校等が実施する入学説明会
- 義務教育諸学校等が実施する卒業式
- 義務教育諸学校等が実施する個人懇談会(三者懇談会、家庭訪問その他担任教師と個々の児童・生徒の保護者との間における意思疎通を目的とする学校行事を含み、学校長名等で実施が通知されるものに限る。)
- 義務教育諸学校等が実施する進路説明会(生徒が進路を決定する上で必要とされる情報の提供を目的として行われる学校行事で、中学校、義務教育諸学校の後期課程又は特別支援学校の中で中学部の第三学年に在学する生徒の保護者を対象とし、学校長名等で実施が通知されるものに限る。)
- その在籍する幼稚園、保育所若しくは認定こども園等が実施するこれらに準ずる行事(進路説明会を除く。)
- 高等学校等が実施する入学式、入学説明会、個人懇談会に出席する場合
愛知県の職員の場合は、子の看護等休暇と重複する休暇になります。しかし、現行の子の参観のための休暇は、特別休暇のうち、年度内9日取得することができる家族休暇のうちの1プランでしかないため(プランは、全部で4つ)、子の看護等休暇を補うものとしてそのまま残すという選択肢もいいのではないかと思います。
ほかの家族休暇は、夏季休暇、家族看護休暇及びリフレッシュ休暇の3プランか。一部現行の特別休暇と既に重複しているね。
何も考えずに現行の休暇を残すことがないようにはしたいですね。
チェックポイント
現行の子の参観のための休暇があれば、継続か、廃止かを決める。
【条例】【規則】育児をする職員の時間外勤務の制限期間を延長する。
現行の制度では、3歳に満たない子のある地方公務員が当該子を養育するために請求した場合、時間外勤務をさせてはならないとされています。
19 地方公務員法第六条第一項に規定する任命権者又はその委任を受けた者(地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和三十一年法律第百六十二号)第三十七条第一項に規定する県費負担教職員については、市町村の教育委員会。以下この条において同じ。)は、三歳に満たない子を養育する地方公務員法第四条第一項に規定する職員(同法第二十二条の四第一項に規定する短時間勤務の職を占める職員以外の非常勤職員にあっては、第十六条の八第一項の規定を適用するとしたならば同項各号のいずれにも該当しないものに限る。)が当該子を養育するために請求した場合において、公務の運営に支障がないと認めるときは、その者について、所定労働時間を超えて勤務しないことを承認しなければならない。
旧育児・介護休業法第61条第19項
国家公務員でも、超過勤務(地方公務員の場合は、時間外勤務)についてそのように制限されています。
第九条 各省各庁の長は、三歳に満たない子のある職員が当該子を養育するために請求した場合には、当該請求をした職員の業務を処理するための措置を講ずることが著しく困難である場合を除き、超過勤務(災害その他避けることのできない事由に基づく臨時の勤務を除く。以下同じ。)をさせてはならない。
人事院規則10-11(育児又は介護を行う職員の早出遅出勤務並びに深夜勤務及び超過勤務の制限)第9条
国家公務員についてこのように定められていますので、地方公務員は、それぞれの条例において人事院規則10-11第9条と同様に定めていると思われます。
たぶん勤務時間条例で定めていると思うよ。
私の自治体では勤務時間条例で定めています。
第1条育児・介護休業法第61条の2第14項では、この「三歳に満たない子」を養育する地方公務員に適用する制限が「小学校就学の始期に達するまでの子」に拡大されています。
14 任命権者等は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する地方公共団体等の職員(短時間勤務職員以外の非常勤職員にあっては、第十六条の八第一項の規定を適用するとしたならば同項各号のいずれにも該当しないものに限る。)が当該子を養育するために請求した場合において、公務の運営に支障がないと認めるときは、その者について、所定労働時間を超えて勤務しないことを承認しなければならない。
第1条育児・介護休業法第61条の2第14項
「三歳に満たない子」を「小学校就学の始期に達するまでの子」とする条例改正が必要となりますので、令和7年4月1日から改正されるよう進めましょう。
念のため勤務時間規則等も確認しておいてね。
なお、会計年度任用職員の勤務時間規則(会計年度任用職員の勤務時間等を条例で定めている場合は、条例)にも同様の規定があると思われますので、同じように改正を進めましょう。
チェックポイント
育児を行う職員の時間外勤務の制限について、「三歳に満たない子」を「小学校就学の始期に達するまでの子」とする条例改正を行う(規則も確認。会計年度任用職員についても忘れずに。)。
介護両立支援制度等の周知及び介護両立支援制度等申出の意向確認に関する措置が義務付けられる。
事業主は、第1条育児・介護休業法第21条第2項(令和7年10月1日以後は、育児・介護休業法等改正法第2条の規定による改正後の育児・介護休業法(以下「第2条育児・介護休業法」という。)第21条第4項)の規定により、家族の介護が必要であることを申し出た労働者に次の事項を知らせなければなりません。
- 介護休業(地方公務員の場合は、長期の介護休暇)に関する制度
- 介護両立支援制度等(仕事と介護との両立に資するものとして厚生労働省令で定める制度又は措置をいう。以下同じ。)
- その他の厚生労働省令で定める事項
また、介護休業申出(地方公務員の場合は、長期の介護休暇の申出)及び介護両立支援制度等申出(介護両立支援制度等の利用に係る申出をいう。以下同じ。)に係る労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければなりません。
地方公務員の場合は、第1条育児・介護休業法第61条の2第1項の規定により適用除外となりますが、情勢適応の原則(地方公務員法第14条)により、第1条育児・介護休業法第21条第2項(政令で定める日(令和7年10月1日)以後は、第2条育児・介護休業法第21条第4項)と同様の措置を講ずるべきとされることとなると思われます。
この厚生労働省令で定める措置ってどれを確認すればいいの?
では、説明しよう。
第1条育児・介護休業法第21条第2項(令和7年10月1日以後は、第2条育児・介護休業法第21条第4項)の厚生労働省令で定める制度又は措置(「厚生労働省令で定めるところにより」の部分)は、改正省令1第1条の規定による改正後の育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則(平成3年労働省令第25号。以下「改正育児・介護休業省令1」)第69条の7(同日以後は、改正省令2第1条の規定による改正後の育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則(以下「改正育児・介護休業省令2)第69条の9に規定されています。
措置の内容は、簡単にいうと、次のとおりです。
- 介護休暇に関する制度
- 所定外労働の制限に関する制度
- 時間外労働の制限に関する制度
- 深夜業の制限に関する制度
- 介護のための所定労働時間の短縮等の措置
チェックポイント
任命権者等は、家族の介護が必要と申し出た職員に介護休暇等の周知と意向確認等の措置を講ずる。
40歳到達年度等に介護両立支援制度等を知らせることが義務付けられる。
事業主は、第1条育児・介護休業法第21条第3項(令和7年10月1日以後は、第2条育児・介護休業法第21条第5項)の規定により、40歳到達年度等の厚生労働省令で定める期間(40歳に達した日の属する年度の初日から末日までの期間又は40歳に達した日の翌日から起算して1年間)の始期に達したときは、労働者に次の事項を知らせなければなりません。
- 介護休業(地方公務員の場合は、長期の介護休暇)に関する制度
- 介護両立支援制度等
- その他の厚生労働省令で定める事項(改正育児・介護休業省令1第69条の10において準用する改正育児・介護休業省令2第69条の8(令和7年10月1日以後は、改正育児・介護休業省令2第69条の12において準用する改正育児・介護休業省令1第69条の10))
地方公務員の場合は、第1条育児・介護休業法第61条の2第1項の規定により適用除外となりますが、情勢適応の原則(地方公務員法第14条)により、第1条育児・介護休業法第21条第3項(令和7年10月1日以後は、第2条育児・介護休業法第21条第5項)と同様の措置を講ずるべきとされることとなると思われます。
ここでも厚生労働省令で定める部分があるね?
再び説明しよう!
第1条育児・介護休業法第21条第3項(令和7年10月1日以後は、第2条育児・介護休業法第21条第5項)の厚生労働省令で定める方法(「厚生労働省令で定めるところにより」とされている部分)は、改正育児・介護休業省令1第69条の12(同日以後は、改正育児・介護休業省令2第69条の14)に規定されています。
その方法は、簡単にいうと、次のとおり
- 面談による方法
- 書面を交付する方法
- ファクシミリを利用して送信する方法
- 電子メール等の送信の方法
チェックポイント
任命権者等は、職員の40歳到達年度等の厚生労働省令で定める期間に入ったら、介護休暇等を周知する。
長期の介護休暇の申出が円滑に行われるようにする措置が義務付けられる。
一般の労働者には、第1条育児・介護休業法第22条第2項の規定により、介護休業申出(地方公務員の場合は、長期の介護休暇の申出)が円滑に行われるよう事業主に対し次のいずれかの措置を講ずるよう義務付けられます。
- その雇用する労働者に対する介護休業(地方公務員の場合は、長期の介護休暇。以下同じ。)に係る研修の実施
- 介護休業に関する相談体制の整備
- その他厚生労働省令で定める介護休業に係る雇用環境の整備に関する措置(改正育児・介護休業省令1第71条の3において読み替えて準用する改正育児・介護休業省令1第71条の2)
地方公務員の場合は、第1条育児・介護休業法第61条の2第1項の規定により適用除外となりますが、情勢適応の原則(地方公務員法第14条)により、長期の介護休暇について同様の措置を講ずるべきとされることとなると思われます。
チェックポイント
任命権者等は、長期の介護休暇の申出が円滑に行われるようにする研修、相談体制等を講ずる。
介護両立支援制度等申出が円滑に行われる措置が義務付けられる。
一般の労働者には、第1条育児・介護休業法第22条第4項の規定により、介護両立支援制度等申出が円滑に行われるよう事業主に対し次のいずれかの措置を講ずるよう義務付けられます。
- その雇用する労働者に対する介護両立支援制度等に係る研修の実施
- 介護両立支援制度等に関する相談体制の整備
- その他厚生労働省令で定める介護両立支援制度等に係る雇用環境の整備に関する措置(改正育児・介護休業省令1第71条の4において読み替えて準用する改正育児・介護休業省令1第71条の2)
地方公務員の場合は、第1条育児・介護休業法第61条の2第1項の規定により適用除外となりますが、情勢適応の原則(地方公務員法第14条)により、同様の措置を講ずるべきとされることとなると思われます。
チェックポイント
任命権者等は、介護両立支援制度等申出が円滑に行われるようにする研修、相談体制等を講ずる。
3歳未満の子を養育する労働者のために在宅勤務等の措置が義務付けられる。
3歳未満の子を養育し、所定労働時間の短縮措置(地方公務員の場合は、部分休業)が講じられていない一般の労働者には、第1条育児・介護休業法第23条第2項の規定により、事業主に対し次のいずれかの措置を講ずるよう義務付けられます。
- 労働者の申出に基づく育児休業に関する制度に準ずる措置
- 労働者の申出に基づく在宅勤務等の措置
- 労働者の申出に基づく始業時刻変更等(地方公務員の場合は、早出遅出勤務)の措置
在宅勤務等の措置が追加されたんだね。
在宅勤務等ができるようにしないといけませんね。
また、第1条育児・介護休業法第24条第2項の規定により、3歳未満の子を養育し、育児休業をしていない一般の労働者について、事業主に対し、在宅勤務等の措置に準じて必要な措置を講ずるよう努力義務が課されます。
地方公務員の場合は、第1条育児・介護休業法第61条の2第1項の規定により適用除外となりますが、情勢適応の原則(地方公務員法第14条)により、同様の措置を講ずるべきとされることとなると思われます。
いつ申し出られてもいいよう在宅勤務等ができるようになっていないとね。
チェックポイント
任命権者等は、3歳未満の子を養育する職員が部分休業を取得しないなら、在宅勤務等ができるようにする(3歳未満の子を養育する職員が部分休業を取得していても、在宅勤務等の措置に準ずる措置を講ずる努力義務がある。)。
介護労働者のために在宅勤務等の措置が努力義務とされる。
家族を介護している労働者には、第1条育児・介護休業法第24条第4項の規定により、事業主に対し、労働者の申出に基づき、在宅勤務等をさせる措置を講ずるよう努力義務が課されます。
地方公務員の場合は、第1条育児・介護休業法第61条の2第1項の規定により適用除外となりますが、情勢適応の原則(地方公務員法第14条)により、同様の措置を検討しましょう。
努力義務だから、何が何でも在宅勤務等の措置をしなきゃいけないわけじゃないけどね。
とはいえ、在宅勤務等をさせる気なしなのは、さすがによくないと思いますね。
チェックポイント
任命権者等には、介護労働者が在宅勤務等ができるようにする努力義務がある。
施行期日が政令で定める日(令和7年10月1日)からのもの
施行期日が育児・介護休業法等改正法の公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日(令和7年10月1日)の法改正の主な内容は、こちらです。
就業条件の意向確認が義務付けられる。
事業主は、第2条育児・介護休業法第21条第2項の規定により、子の出生以後に発生するワーク・ライフ・バランスの支障となる事情の改善のため、就業条件の意向確認が義務付けられます。
育児休業等申出等の意向確認(育児・介護休業法第21条第1項)と同じだね。
第2条育児・介護休業法第21条第2項の厚生労働省令で定める方法(「厚生労働省令で定めるところにより」とされている部分)は、改正育児・介護休業省令2第69条の6において準用する改正育児・介護休業省令2第69条の3に規定されています。
具体的な内容は、こちら
- 面談による方法
- 書面を交付する方法
- ファクシミリを利用して送信する方法
- 電子メール等の送信の方法
事業主が確認した就業条件の意向は、第2条育児・介護休業法第21条第3項の規定により配慮しなければならないこととされていますので、「確認しただけで何もしない」というわけにはいかないようになっています。
ちゃんと就業条件に反映してもらわないとね。
「確認しただけで何もしない」って、ありそうですよね。
地方公務員の場合は、第1条育児・介護休業法第61条の2第1項の規定により適用除外となりますが、情勢適応の原則(地方公務員法第14条)により、同様の措置を講ずるべきとされることとなると思われます。
チェックポイント
子の出生日以後に発生するワーク・ライフ・バランスの支障となる事情の改善のため、就業条件の意向確認が義務付けられる。
小学校入学前の子を養育する労働者等に関する対象措置が義務付けられる。
事業主は、第2条育児・介護休業法第23条の3第1項の規定により、3歳から小学校就学の始期に達するまで(小学校入学前まで)の子を養育する労働者から申出があった場合、次のうち2つ以上の措置(以下「対象措置」という。)が義務付けられます。
- 始業時刻変更等の措置であって厚生労働省令で定めるもの(地方公務員の場合は、早出遅出勤務)
- 在宅勤務等の措置
- 育児のための所定労働時間短縮措置(地方公務員の場合は、部分休業)
- 労働者が働きながら育児をすることを容易にするための休暇(子の看護等休暇、介護休暇及び年次有給休暇を除く。以下「新育児休暇」という。)
- その他厚生労働省令で定める措置(労働者の3歳から小学校就学の始期に達するまでの子に係る保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与(改正育児・介護休業省令2第75条の4))
この措置を講じようとするときは、労働組合等の意見聴取が必要だよ(第2条育児・介護休業法第23条の3第4項)。
新育児休暇を新設する場合、厚生労働省令で定める短時間勤務労働者以外の労働者は、1日未満の単位で取得可能です(第2条育児・介護休業法第23条の3第2項及び改正育児・介護休業省令2第75条の5)。
ただし、次の労働者のうち労使協定等で定められたものについては、第2条育児・介護休業法第23条の3第1項の規定が適用されません。
- 引き続き雇用された期間が1年未満
- 対象措置を講じないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの(1週間の所定労働日数が二日以下の労働者(改正育児・介護休業省令2第75条の6))
- 新育児休暇の取得が困難な労働者(厚生労働省令で定める短時間勤務労働者以外の労働者に限る。)
事業主は、3歳未満の子を養育する労働者に対し、厚生労働省令で定める期間(当該労働者の子が1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日までの1年間(改正育児・介護休業省令2第75条の8))内に、次の事由を行わなければなりません(第2条育児・介護休業法第23条の3第5項及び改正育児・介護休業省令2第75条の7において準用する改正育児・介護休業省令2第69条の3)。
- 対象措置その他の厚生労働省令で定める事項(改正育児・介護休業省令2第75条の9)を知らせること。
- 対象措置の申出についての労働者の意向確認のための面談その他の厚生労働省令で定める措置(改正育児・介護休業省令2第75条の10において準用する改正育児・介護休業省令2第69条の5)
上述した就業条件の意向確認も行うこととなります。第2条育児・介護休業法第23条の3第6項では、この就業条件の意向確認を定めるに当たり、第2条育児・介護休業法第21条第2項及び第3項の規定を準用することとしています。
第2条育児・介護休業法第23条の3第6項で準用した規定は、次のとおりだよ。
2 事業主は、前項の措置を講ずるに当たっては、厚生労働省令で定めるところにより、第二十三条の三第五項に規定する対象措置に係る子の心身の状況又は育児に関する当該対象措置の対象となる労働者の家庭の状況に起因して発生し、又は発生することが予想される職業生活と家庭生活との両立の支障となる事情の改善に資するものとして厚生労働省令で定める就業に関する条件に係る当該労働者の意向を確認しなければならない。
第2条育児・介護休業法第23条の3第6項において読み替えて準用する第2条育児・介護休業法第21条第2項
3 事業主は、前項の規定により意向を確認した労働者に係る就業に関する条件を定めるに当たっては、当該意向に配慮しなければならない。
第2条育児・介護休業法第23条の3第6項において準用する第2条育児・介護休業法第21条第3項
なお、次の事由を理由とした解雇等の不利益な取扱いは、禁止されています(第2条育児・介護休業法第23条の3第7項)。
- 対象措置の申出をしたこと。
- 対象措置が講じられたこと。
- 上述の労働者の就業条件の意向の内容
地方公務員の場合は、第1条育児・介護休業法第61条の2第1項の規定により適用除外となりますが、情勢適応の原則(地方公務員法第14条)により、同様の措置を講ずるべきとされることとなると思われます。
厚生労働省令の内容が多いね。今の段階じゃよくわからないな。
新育児休暇は、国家公務員がどうするか気になります。国家公務員の制度は、地方公務員にも影響しますからね。注意が必要です。
チェックポイント
任命権者等は、3歳から小学校入学前までの子を養育する労働者のために2つ以上の対象措置が義務付けられる(国家公務員制度の動向に注意)。
特定事業主行動計画に育児休業等の取得状況等を含めるよう義務付けられる。
国及び地方公共団体の機関等が定める特定事業主行動計画は、育児・介護休業法等改正法第3条の規定による改正後の次世代育成支援対策推進法第19条第3項の規定により、育児休業等の取得の状況及び勤務時間の状況を把握し、職員のワーク・ライフ・バランスが図られるようにするために改善すべき事情について分析した上で、その結果を勘案して、数値目標で特定事業主行動計画を定めることとされます。
つまり、国と自治体は、特定事業主行動計画について次の記載が必要となります。
- 育児休業等の取得の状況及び勤務時間の状況の数値
- 職員のワーク・ライフ・バランスにおいて改善すべき事情の分析結果
- 次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標の数値化
「次世代育成支援対策」は、次世代育成支援対策推進法第2条に定められているよ。
目標を数値で記載するのは、厳しいですね。
具体的な定め方については、内閣府令で定めるところによることとされていますので、内閣府令を待つこととなります。
チェックポイント
特定事業主行動計画は、育児休業等の取得の状況及び勤務時間の状況の数値、職員のワーク・ライフ・バランスにおいて改善すべき事情の分析結果及び次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標の数値化が必要となる(内閣府令の確認が必要)。
施行期日が育児・介護休業法等改正法の公布の日からのもの
施行期日が育児・介護休業法等改正法の公布の日となる法改正の主な内容は、こちらです。
特定事業主行動計画の策定義務が延長される。
次世代育成支援対策推進法の有効期限は、令和7年3月31日までですが、延長されて令和17年3月31日までとなります(育児・介護休業法等改正法第3条の規定による改正後の同法附則第2条第1項)。
なんとなくそうなる予感はしてた。
このまま特定事業主行動計画を策定し続ける気がしますね・・・。
チェックポイント
次世代育成支援対策推進法の有効期限は、令和17年3月31日まで延長される。
地方公営企業法(昭和27年法律第292号)の誤りを改正する。
これは、特に大きな影響があるわけではありません。
令和6年3月7日、地方公営企業法の誤りが12年間放置されていたという報道がありました。
「どこのことだろう?」と思って探していたら、育児・介護休業法等改正法附則第8条の規定による地方公営企業法の改正で対処されています。
「項ずれ」ってやつだね。ありがち!
気を付けたいですね。
最後に
以上が育児・介護休業法等改正法で対処すべき内容です。
少し整理します。
施行期日が令和7年4月1日の法改正の内容は、こちらです。
- 子の看護休暇を子の看護等休暇(小学校3年生までを対象とし、入園式等の子の行事参加も対象とする。)に改正する(会計年度任用職員については、任用期間6か月未満の会計年度任用職員も対象とすること。)。
- 短期の介護休暇(5日)を6月に満たない会計年度任用職員も対象とする改正を行う。
- (子の参観休暇がある場合)子の参観休暇を継続するか決める。
- 育児を行う職員の時間外勤務の制限について、「三歳に満たない子」を「小学校就学の始期に達するまでの子」とする改正を行う(会計年度任用職員についても忘れずに。)。
- 介護に関する制度等の周知、意向確認、措置等を行う。
- 在宅勤務等の措置を講ずる。
施行期日が政令で定める日の法改正の内容は、こちらです。
- 任命権者等に育児又は介護のための措置等が義務付けられる。
- 特定事業主行動計画に育児休業取得状況及び勤務時間状況の数値、分析結果及び数値目標を定める。
施行期日が公布の日の法改正の内容は、こちらです。
- 地方公営企業法の誤りを修正する。
- 次世代育成支援対策推進法の有効期限は、令和17年3月31日まで延長される。
令和7年4月1日から施行されるものについては、条例及び規則の整備があるので、早めに準備しましょう。
以上です。
条例改正等の進め方が分からない場合は、条例改正等のマニュアルの記事を御覧ください。
では、無理なく適切な処理となるよう計画的に進めましょう!
大ボリュームだったね。
条例と規則の改正については粛々と進めればいいのですが、各種措置を講ずることが大変かもしれません。人事担当等の職員は、早めに対処して無理なく仕事を進めましょう!
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