必見!条例改正等の進め方

法令情報
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 こむぞうです。

 地方公務員は、法令等の規定により業務を行っていますが、条例等を自ら立案することについて不得手です。法改正に直面したらどう条例等を改正するかについては、更にどうしたらいいかわからないと思います。

 そこで、今回は、私なりの改正手法をここで示したいと思います。書籍等でも見かけない情報ですので、条例等を改正しなければならない状況になったら是非参考にしてみてください。

こむぞう
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いまだにこのやり方で条例改正をしています。結構使えます。

法改正情報をチェック

 条例等の改正は、十中八九「法改正があったから条例等を改正する。」というパターンです。条例等を使って政策的に課題解決を目指す考え方(政策法務)で条例等を整備するパターン(自治体オリジナルの自主的なパターン)は、まれです。

 さて、では、法改正情報は、どう把握するかというと、おおむね次の方法から入手します。

  • 国や都道府県からの情報提供(改正例をもらえたりすることもあります。)
  • 官報で自ら確認
  • 関係省庁のホームページの「国会提出法案」
  • 衆議院又は参議院の「議案」

 法改正情報を発見したら、次の資料を入手しましょう。

  • 法改正の概要
  • 法令案
  • 新旧対照表

改正事務用のノートを作る。

 条例等の改正事務は、何か月も先まで関わります。

 決裁を受けておしまいではありません。改正が無事に施行された後であっても、「なぜあの改正をしたのか」という説明責任を後になって果たすことになる場合もあります。そのときになると、かなり当時はOKを出した上司もなぜOKを出したか忘れていることがほとんどです。もちろん、実際に事務を行った自分自身も細かなことは忘れてしまいます。

 そのときのために、何か月先でも思い出せるノートを必ず作っておきましょう。

 ノートの内容は、次のようなことを書き留めておきましょう。きっと役に立ちます。

  • 条例等を改正することになった根拠法令(法律案等の国会提出日、成立日、公布日、施行期日、改正の概要等)
  • 検討過程(疑問点、誰に確認を取るか、いつ、誰が疑問点に結論を出したか等)
  • 資料の切り抜きの貼付

引用している条例等をチェック

 法改正情報を入手しても、そこから条例等をどう改正すべきかはやはり分かりません。法改正の内容を把握して条例等のどこを改正すべきか分かればいいのですが、そこまで万能ではありません。

 そこで、まず分かるところから着手します。

 まず分かるところは、その改正される法令を引用している条例等を検索します。各自治体では、条例等のデータベースを持っていると思いますので、そこで改正される法令のキーワードで検索しましょう。

 法令の引用とは、例えば次のような条例の条文では、「地方公務員法」が引用されていることになります。

第1条 この条例は、地方公務員法(昭和25年法律第261号。以下「法」という。)第24条第5項の規定に基づき、一般職に属する職員(以下「職員」という。)の給与について定めるものとする。

給与に関する条例(例)

 その条例の途中から略称を用いることとなっていたらその略称でも検索します。上記の例であれば「法」ですね。もしデータベースの仕様で検索できない場合は、検索機能(「Ctrl」キーと「F」キー同時押し)を使って検索しましょう。

 引用法令が見つかった場合は、改正される法令の第何条(第何項・第何号)を引用しているか確認してノートに書き留めておきます。

条、項、号等の移動があるか。

 条例等の引用法令のうち、その引用法令の条、項、号等が移動するなら改正しましょう。

 単なる移動だけであればいいのですが、移動しつつ字句の改正があるようであれば、その改正内容も気にしてみましょう。条例等も同様に改正する必要があるかもしれません。

こむぞう
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「見たくない」と思う気持ちをとりあえず押し殺して、新旧対照表を最初からゆっくり眺めていきましょう。まずは制度が大きく変わる箇所に気づいたらラッキーくらいの確認で問題ありません。

 分からないところがあったら、検討材料としてノートに書き留めておきましょう。

 また、条、項、号等の改正がある場合は、他の条例、規則等で引用されていないか確認しましょう。もちろん引用されていたら、その引用している条例、規則等も改正対象です。

こむぞう
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他の条例、規則等への影響は、つい忘れがちです。注意!

条、項、号等の廃止があるか。

 条例等の引用法令のうち、その引用法令の条、項、号等の廃止があるなら、こちらも改正しましょう。

 難しいのは、引用法令が廃止された後の条例等の条文をどうするかです。

 通常であれば、引用法令の条、項、号等が削除されたのであれば、そのルールはなくなったということですので、その引用してる条例等の条は、削るべきです。

こむぞう
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条例等の条文中に引用法令があるということは、その引用法令がこの条例等の条文の根拠になる場合が多いです。引用法令がなくなったのなら、当然引用していた条例等の条文も不要になるのが自然です。

 しかし、法令の条、項、号等がなくなってしまっても条例等の条文としては残す必要があるかもしれません。すぐに結論が出ない場合は、ノートに書き留めておきましょう。

条、項、号等の追加があるか。

 条例等の引用法令のうち、その引用法令の条、項、号等の追加があるなら、どのような内容か確認しましょう。

こむぞう
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確認したら、その内容をノートに要約しておくといいですよ。

 条例等に反映すべきかすぐに結論が出ない場合は、ノートに書き留めておきましょう。

新たな固有名詞が出てくるか。

 例えば、「非常勤職員」が「会計年度任用職員」に改正されるような、固有名詞(専門用語)が変わったり、新しい固有名詞が出てきた場合は、改正する必要があります。

 固有名詞が変わる場合は単に入れ替えるよう改正すればいいのですが、新しい固有名詞については、どうすべきか難しいですね。

 条例等に反映すべきかすぐに結論が出ない場合は、ノートに書き留めておきましょう。

定義された用語又は略称の改正

 条文中に「以下「法」という。」や「第3条において「法」という。」という言葉が出ることがあります。これを「定義規定」とか「略称規定」といいます。これについては、その改正が行われることで次のようなことにならないか、御注意ください。

  • 「以下「法」という。」といいつつ、もう「法」という略称を使うことがなくなったりしないか。
  • 「第3条において「法」という。」といいつつ第3条が移動していたり「法」が第3条以外にも使われることにならないか。

 もちろん、上記のようなことがある場合は、定義規定や略称規定の改正が必要となります。

実務担当者としての「勘」

 不慣れな作業でも独力でできる限りのことはしました。あと独力でできることとしては、実務担当者としての「勘」です。

 「ここまできてそれか!?」と思われるかもしれませんが、条例等の審査担当3年、その他担当13年、合計16年の公務員経験の私でも、これまでの実務で目を通してきた法令等と改正内容と見比べて、「この法改正があったなら、あっちの条例等の条文も変えなければいけないのではないか。」という仮説を立てて調べるしかありません。

 日々の実務について根拠を確認するという積み重ねが大切になります。

こむぞう
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今まで日々の実務で根拠の確認をおろそかにしていたというならば、せめてできる範囲で法改正の新旧対照表を見ながら考えてみましょう。多くを求めてはいけません。そのときの能力でできることをやってみましょう。

検討中の内容について確認

 これまでの過程ですぐに結論が出なかったところについて、再度考えてみましょう。手段としては、次の3点です。

  • ベテラン職員に聞く。
  • 他の自治体に聞く。
  • 条例等の審査担当に相談する(総務課、文書課、法規課等)。

 ベテラン職員は、条例等に詳しくないかもしれませんが、制度には詳しいと思います。自分では思わぬヒントが得られるかもしれません。

 他の自治体に聞くのは、遅かれ早かれ必ず必要となります。また、法改正による条例等の改正は、どこの自治体も同様の対処が必要となります。お互いにとってチャンスです。遠慮せず連絡をして、この機会に仲良くなってみましょう。今後の様々な事務のヒントをもらえるかもしれません。そのときは、本題のほか、次の点も聞いておきましょう。

こむぞう
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他の自治体担当者の名前と連絡先を控えておくと、次の改正事務のときにもいいですよ。

  • こちらが検討中の案件をどうする予定か(ここが本題)。
  • いつ議会等に提案するか。
  • その回答者の部署、氏名等

 ついでに自分が知ったことを情報提供してあげるとなおよしです。

 条例等の審査担当に相談するのは、相談先の最後にしましょう。まずは自分が改正内容をよく分かっていないと会話になりません。条例等の審査担当は、想いを形にすることは得意なのですが、それぞれの制度には詳しくありません(もし詳しかったら、その審査担当が優秀だということです。)。

 また、条例等の審査担当には、相談内容がなくとも必ず一声掛けておきましょう。早めに改正することを伝えておけば、フォローしてもらいやすくなります。

こむぞう
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声を掛けておくことで気にしてもらえるし、審査担当者の時間を奪わなくて済みます。こうした配慮は、いつか巡り巡って自分を助けてくれます。

まずは新旧対照表から作成

 自治体によって手法は様々かもしれませんが、まずは新旧対照表から作成しましょう。

 新旧対照表とは、改正前と改正後が分かりやすいように作成された表のことで、例えば次のようなものになります。

 自治体によって、新旧対照表の様式は様々です。よく自治体のルールを御確認ください。

 「どう改正後の条文を書いたらいいか分からない。」という人もいるかもしれませんが、気にしなくて大丈夫です。二度手間になるかもしれませんが、まずは想いを形にするところから始めましょう。十中八九条例等の審査担当に直されると思いますが、そこは気にせずお任せしましょう。

こむぞう
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条例等の改正事務は、当初の案のとおりに進まないのはよくあることです。気にせずににしましょう。

改正スケジュールの把握

 ここまで済んだら、改正までのスケジュールを確認しましょう。

 特に条例は、議会に提案しなければならず、議会に提案するためには期限までに条例案を提出しなければならないため、しっかりとしたスケジュールが大切です。次の順序で考えましょう。

  1. 条例等の改正箇所の施行期日を確認する。
  2. 条例等が最短でいつ成立するか確認する。
  3. 改正される前に周知期間が必要か確認し、周知期間が必要であれば施行期日より何か月か早めに条例等が成立するよう動く(改正すると不利益になる人がいる場合等に周知期間が必要)
  4. 条例等を成立させたい日の提出期限を確認する。

こむぞう
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この順序を整理しないと慌てることになったり間に合わなかったりします。必ずスケジュールを立てましょう。

 なお、条例等の改正を周知するためには、その条例等が成立し、公布されなければ周知してはいけません。この点は、御注意ください。

 ちなみに一刻も早く改正したい場合は、施行期日を公布の日とすることになります。

法制執務に従った条文作成

 新旧対照表ができて、スケジュールも把握できたら、ちゃんとしたルール「法制執務」も把握しておきましょう。

 「法制執務」とは、制を定し、その法律の規定に基づき行政活動を行し、当該事を処理することをいいます。

 つまり、条例等を作る技術です。

 条文等は、今まで作られてきた法律と同様に作り上げることになります。どこかに書いてあるわけではありませんが、法解釈としては、同じ意味の言葉は、原則として同じ言葉を使います。別の言葉を使っても同じ意味として解釈されることもよくありますが、同じ言葉の方が議論が不要なため、よりよいとされます。

 法制執務は、自治体それぞれで作ることになりますが、やはり法律と同じルールにすることが多いですね。

 その法制執務ですが、実は公式ルールブックというものはなく、結局これまでの法令の例からルールを知ることになります。

 さすがに条例等の審査担当でもないとこのルールを把握しておくのは難しいと思いますので、法令用語、改正するときの字句の特定範囲を確認するくらいで、法制執務については、余り気にせず、条例等の審査担当にお任せしていいと思います。新旧対照表を条例等の審査担当に見せて、どう改正したいか想いを伝えましょう。

 とはいえ、気になる人は気になりますよね。また、何もなく法令を一つ一つ確認して結論を出すのでは大変です。そこで、よく参考としている書籍3冊を御紹介します。これで条文の書き方の疑問点はおおむね解決されると思いますので、是非参考にしてみてください。なお、書籍の画像をクリックすると楽天の購入ページに移動します。

 まずは、「法制執務詳解新版Ⅲ」(著者 石毛正純)です。

 ↑の書籍は、とても分厚いのですが、大部分は条文の例です。分かりやすいものとなっています。およそ3週間くらいで読み終わると思います。恐らくどこの自治体の条例等の審査担当も持っている書籍です。

こむぞう
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これ1冊読んだらおおむね法改正の仕組みが分かります。主な法令用語も掲載されているため、条文を読み解くときにも役立ちます。

 次に、「分かりやすい法律・条例の書き方[改訂版]」(著者 礒崎陽輔)です。

 ↑の書籍は、細かな疑問にも答えをくれるので、「法制執務詳解新版Ⅲ」を補ってくれます。

こむぞう
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「かゆいところに手が届く」1冊です。「以下「○○」という。」は、「〇〇」が何回使われるなら「次条及び第5条において「〇〇」という。」等のように使用箇所を限定するのかという問いにも答えてくれます。

 最後に、「分かりやすい公用文の書き方[改訂版(増補)]」(著者 礒崎陽輔)です。

 ↑の書籍は、公用文の基礎が紹介されています。法令の基礎は、公用文ですので、こちらも大変参考になります。「分かりやすい法律・条例の書き方[改訂版(増補2)]」と同様のものですので重複する内容もありますが、条例等の改正事務に携わっていなくとも公用文には日々関わるため、是非持っておきたい1冊です。

こむぞう
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「子ども」と「子供」。公用文で使うならどちらかという疑問にも答えてくれます。

条例等の案(改め文)の作成

 法制執務のルールを踏まえたら、条例等の案(改め文)を作成することとなると思います。しかし、近年は、この条例等の案(改め文)をなくして新旧対照表のみで改正するという自治体もありますので、この点については所属する自治体のルールをよく確認しておいてください。

 条例等の案(改め文)とは、法律の例では、こういうものです。

 どこをどう改正するかを全て文章で作られているので、パッと分かりませんね。上記の法制執務で説明されたものが形になったものがこれです。

 この例でいえば、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律(令和3年法律第56号)」が施行期日に動き出すと、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)」がこのとおりに改正される、という仕組みです。

こむぞう
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この仕組みを理解するのに半年くらいかかりました。「〇〇条例の一部を改正する条例」は、こういう題名の一つの条例ということに気づいていなかったのです。しかし、このポイントを押さえておけば、法制執務という仕組みがよく分かるようになります。

 この前提を勘違いすると、なぜこの書類を作成しているか分からなくなるのでよく承知しておいてください。

 条例等の案(改め文)の作成に当たっては、真剣にやるなら上記の書籍を見ながら作成してもいいのですが、かなり大変だと思いますので、まずは例文や前例を見てなんとなく作成しておくくらいを目標にしましょう。後は、やはり条例等の審査担当にお任せです。

業者任せという手もある。

 事務量として大変なときは、業者に任せるという手もあります。

 ただし、負担がなくなるというわけではないことに御注意ください。

 次のとおりメリット・デメリットを整理しましたので、費用対効果を考えて発注を検討してみてください。

メリット

  • 業者から「こんな感じでどうでしょうか?」と分かりやすい資料を作成してくれる。
  • 職員説明会の開催も含めて引き受けてくれたりする。
  • 改正もれを防ぐことができる。

デメリット

  • こちらのルールどおりの改め文や新旧対照表で作成してもらえない(結局自分たちで作ることになる。)。
  • 費用が高い(数百万円とか)。
  • 決定権は発注者側にあるので、結局自分たちで勉強して結論を出す必要がある(どのような条文となったらいいかについては、業者では責任を負ってもらえない。)。

こむぞう
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ちなみに私は、条例等の審査担当だったときに、地域主権改革(民主党政権時代の「地方分権改革」)で業者に依頼したことがありましたが、上記のデメリットのほか、改正内容は実は量が多いだけで簡単だったため、余り負担が減らなかったと後悔しました。皆さんは、よく考えて発注を検討してみてください。

この記事への想い

 今回の記事を書いたのは、長い間続いてきた事務であるのにもかかわらず、ベテラン前任者は人事異動でいなくなり、さっぱり伝承するものがなく、突然条例等の審査担当になった私は、これまでの実績、書籍等を一から調べて対処することになりました。さらに、条例等の審査を担当することになった私は、「なぜこういう改正をするのか。」「こういう改正も必要ではないのか。」と条例等の立案担当者に質問しても、回答が曖昧。立案したらもう仕事は終わった気でいる人が多く、審査担当者はどういう方向に導いてあげたらいいかも分かりませんでした。結局こちらで調べて結論を示してあげるということが多かったですね。私の所属団体では、一定の勤続年数になった職員には条例等の改正事務の研修を受けることになっていますが、その知識を実務で活用するところまでいっていないようです。

 かといって改めて勉強し直すにしても、そもそも法制執務の基本的な知識の習得には、「法制執務詳解新版Ⅲ」という基本的な法制執務の書籍を読むだけでも3週間ほどもかかりました。それぞれの自治体特有の書類作成ルール等を把握すること、それが突然慣れない事務であることを踏まえれば、その大変さは想像に難くないところでしょう。

 そして、例え条例改正等のやり方が分かったとしても、法改正があったときの対処法というものに決まった型はないため、何をどうしたらいいか更に分からないと思います。

 この状況を何とかすべく、私の知識や技術を共有したいと思い、ここにようやく形にできたというものです。書籍等で見つけることは難しいと思いますので、是非参考にしていただければと思います。

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