ブログ「公務員ってどうなの?」のこむぞうです。
地方自治法(昭和22年法律第67号)が改正され、普通地方公共団体の長等の損害賠償責任の一部免責条例で引用する同法第243条の2の7と公営企業(水道事業、下水道事業等)の設置条例等で引用する同法第243条の2の8が移動するため、改正が必要となります。
忘れずに行いましょう。
法改正情報
- 公布の日 令和6年6月26日
- 施行期日 公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日ほか
これは、国が地方公共団体に指示することができるようにする改正として話題になった地方自治法の改正です。
別件ですが、この法改正の中に含まれている公金の収納事務のデジタル化として特定歳入等の収納に関する条を、地方自治法第243条の2の7として追加するため、次のとおり同法の条が移動します。
とばっちり!?
新しく追加する条を第243条の2の6の2としてくれれば条例改正不要だったのに・・・。
施行期日は、公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日とされており、恐らく「地方自治法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令」という題名の政令が公布されて、施行期日が決まると考えています。同令に「令和6年法律第65号」の記載のあることを必ず確認しましょう。
令和8年12月25日までに施行されるんだね。
条例であれば、令和8年9月議会まで(開会時期によっては、同年12月議会でも間に合うかも?)に議会に提出が必要です。忘れずに予定しておきましょう。
改正が必要な条例、規則等
改正が必要なのは、地方自治法第243条の2の7と同法第243条の2の8を引用している条例、規則等です。
施行期日は、上述のとおり令和8年12月25日までに決まります。条例であれば、令和8年9月議会(開会期間によっては、同年12月議会)に条例案を提出するようスケジュールを組みましょう。
普通地方公共団体の長等の損害賠償責任の一部免責条例
普通地方公共団体の長等の損害賠償責任の一部免責条例とは、地方自治法第243条の2の7第1項の規定により、損害賠償責任を一部免責をすることができるようにしている条例です。
地方自治法第243条の2の7第1項は、次のようになっています。
第二百四十三条の二の七 普通地方公共団体は、条例で、当該普通地方公共団体の長若しくは委員会の委員若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員(次条第三項の規定による賠償の命令の対象となる者を除く。以下この項において「普通地方公共団体の長等」という。)の当該普通地方公共団体に対する損害を賠償する責任を、普通地方公共団体の長等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、普通地方公共団体の長等が賠償の責任を負う額から、普通地方公共団体の長等の職責その他の事情を考慮して政令で定める基準を参酌して、政令で定める額以上で当該条例で定める額を控除して得た額について免れさせる旨を定めることができる。
地方自治法第243条の2の7第1項
普通地方公共団体の長等の損害賠償責任の一部免責条例は、地方自治法第243条の2の7第1項の規定により定める条例ですので、多くは第1条で同項を引用しています。
例えば、愛知県条例では、次のようになっています。
第一条 この条例は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十三条の二の七第一項の規定に基づき、知事、副知事、教育委員会の教育長又は委員、公安委員会の委員、選挙管理委員会の委員、監査委員、人事委員会の委員、労働委員会の委員、収用委員会の委員、海区漁業調整委員会の委員、内水面漁場管理委員会の委員、地方公営企業の管理者、病院事業の管理者、警察本部長その他県の職員(同法第二百四十三条の二の八第三項の規定による賠償の命令の対象となる者を除く。以下「知事等」という。)の県に対する損害賠償責任の一部免責に関し必要な事項を定めるものとする。
知事等の損害賠償責任の一部免責に関する条例(令和2年愛知県条例第1号)第1条
この引用している地方自治法第243条の2の7第1項を同法第243条の8第1項に改正する必要があります。
この愛知県条例、地方自治法第243条の2の8第3項も引用しているね。
公営企業の設置等に関する条例
公営企業には、次のとおり様々なものがあります。
- 水道事業
- 下水道事業
- 交通事業
- 病院事業
- ガス事業
- 電気事業
設置するに当たり、どれも地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第4条の規定により条例で定めなければなりませんが、この条例で多くは、地方自治法第243条の2の8第8項を引用していると思われます。
8 第三項の規定により監査委員が賠償責任があると決定した場合において、普通地方公共団体の長は、当該職員からなされた当該損害が避けることのできない事故その他やむを得ない事情によるものであることの証明を相当と認めるときは、議会の同意を得て、賠償責任の全部又は一部を免除することができる。この場合においては、あらかじめ監査委員の意見を聴き、その意見を付けて議会に付議しなければならない。
地方自治法第243条の2の8第8項
さらに、地方自治法第243条の2の8第8項は、公営企業については地方公営企業法第34条において準用しますので、同項を読み替えて準用すると、次のようになります。
8 第三項の規定により監査委員が賠償責任があると決定した場合において、普通地方公共団体の長(管理者が置かれている場合は、「普通地方公共団体の長」を「管理者」と読み替える。)は、当該職員からなされた当該損害が避けることのできない事故その他やむを得ない事情によるものであることの証明を相当と認めるときは、条例で定める場合には議会の同意を得て、賠償責任の全部又は一部を免除することができる。この場合においては、あらかじめ監査委員の意見を聴き、その意見(管理者が置かれている場合は、「あらかじめ監査委員の意見を聴き、その意見」を「管理者があらかじめ監査委員の意見を聴き、普通地方公共団体の長が当該意見」と読み替える。)を付けて議会に付議しなければならない。
地方公営企業法第34条において読み替えて準用する地方自治法第243条の2の8第8項
管理者が置かれている場合は、小さい文字のとおりに読み替えるから注意してね。
条例では、地方自治法第243条の2の8第8項の規定により議会の同意を得て賠償責任の免責をする場合をいくら以上の賠償額の事件かをあらかじめ定めていることがあると思います。
名古屋市条例では、次のような規定となっていました。
第6条 法第34条において準用する地方自治法(昭和22年法律第67号)第243条の2の8第8項の規定により、第1条の事業の業務に従事する職員の賠償責任の免除について議会の同意を得なければならない場合は、当該賠償責任に係る賠償額が20万円以上である場合とする。
名古屋市水道事業等の設置等に関する条例(昭和41年名古屋市条例第58号)第6条
現在の規定内容はともかくとして、地方自治法第243条の2の8が引用されていたら、同条を同法第243条の2の9に改正する必要があります。
損害賠償責任を有する職員の指定に関する規則
法令の規定に違反して支払事務等を行ったり、行わなかったりしたときに自治体に損害を与えた職員を定める規則です。こちらでも条が移動する予定の地方自治法第243条の2の8第1項を引用しているため、規則改正の必要があります。
地方自治法第243条の2の8第1項は、次のように定められています。
第二百四十三条の二の八 会計管理者若しくは会計管理者の事務を補助する職員、資金前渡を受けた職員、占有動産を保管している職員又は物品を使用している職員が故意又は重大な過失(現金については、故意又は過失)により、その保管に係る現金、有価証券、物品(基金に属する動産を含む。)若しくは占有動産又はその使用に係る物品を亡失し、又は損傷したときは、これによつて生じた損害を賠償しなければならない。次に掲げる行為をする権限を有する職員又はその権限に属する事務を直接補助する職員で普通地方公共団体の規則で指定したものが故意又は重大な過失により法令の規定に違反して当該行為をしたこと又は怠つたことにより普通地方公共団体に損害を与えたときも、同様とする。
地方自治法第243条の2の8第1項各号列記以外の部分
「若しくは」と「又は」が多くて、どういうことかよく分からない・・・。
じゃあ、こんな感じで整理してみよう。
つまり、地方自治法第243条の2の8第1項が定めていることは、次の職員が故意又は重大な過失(現金については、重大でない過失を含む。)により、現金等をなくしたり、損傷したとき又は法令の規定に違反して支払事務等を行ったり、支払事務等を行わないことで法令の規定に違反したときは、損害を賠償しなければならないということです。
- 会計管理者
- 会計管理者の事務を補助する職員
- 資金前渡を受けた職員
- 占有動産を保管している職員
- 物品を使用している職員
- 支出負担行為、支出命令、支出命令に違反等のないことの確認、支出、支払又は請負等の契約に関する監督又は検査をする権限を有する職員で普通地方公共団体の規則で指定したもの
- ⑥の権限に属する事務を直接補助する職員で普通地方公共団体の規則で指定したもの
さて、地方自治法第243条の2の8第1項の中身については、この規則改正では重要ではありませんので、詳しく知ろうとしなくとも問題ありません。こういう構成になっているので、改正が必要なこの規則を探してもらうために必要な情報として承知しておいてください。同条が同法第243条の2の9とされることに伴い、引用しているこの規則を改正しなければならないというのが本題です。
さて、本題の規則についてですが、地方自治法第243条の2の8第1項後段の普通地方公共団体の規則で指定したものは、おおむねこのように規則で定めていると思われます。
地方自治法(昭和22年法律第67号)第243条の2の8第1項の規定により損害を賠償する責任を有する職員は、同項各号に掲げる行為をする権限を有する職員の権限に属する事務を直接補助する職員とする。
刈谷市賠償責任を有する職員の指定に関する規則(昭和50年刈谷市規則第14号)
この愛知県刈谷市の規則のような題名で定められていると思うけど、愛知県豊橋市のように予算決算会計規則に定めているところもあるみたい。
定めていない自治体もあるようです。地方自治法第243条の2の8第1項を引用しているかをしっかり確認してください。
まとめ
では、まとめです。
地方自治法の改正に伴う条例、規則等の改正内容は、次のとおり条が移動するため、これらの条を引用している場合は、移動後の条を引用するよう改正することです。
施行期日を早めに確認して、淡々とこなしましょう。
単純作業の改正になりそうだね。
このほか、条例改正等の進め方の記事を参考にして、よく御確認ください。
コメント