ブログ「公務員ってどうなの?」のこむぞうです。
法規担当をしている中で見つけた、思わず「そんな法律があったとは!」と思ってしまう法律を集めました。
実務にも活用できるものもあります。どうぞ、御覧ください。
年齢は、原則として満年齢とする法律
年齢には、通常使っている満年齢のほか、数え年といったものもあります。
満年齢を当然のように使っていますが、実は法律で満年齢を使うことを原則とするよう定められてます。
この法律施行の日以後、国民は、年齢を数え年によつて言い表わす従来のならわしを改めて、年齢計算に関する法律(明治三十五年法律第五十号)の規定により算定した年数(一年に達しないときは、月数)によつてこれを言い表わすのを常とするように心がけなければならない。
年齢のとなえ方に関する法律(昭和24年法律第96号)第1項
この法律施行の日以後、国又は地方公共団体の機関が年齢を言い表わす場合においては、当該機関は、前項に規定する年数又は月数によつてこれを言い表わさなければならない。但し、特にやむを得ない事由により数え年によつて年齢を言い表わす場合においては、特にその旨を明示しなければならない。
年齢のとなえ方に関する法律第2項
特に公務員は、満年齢を使うのが義務なんだね。
「満3歳」と言わなくても、年齢を言うときは、満年齢なのですね。条例等で定める場合は、気にしておきましょう。
貨幣(硬貨)は20枚まで!とする法律
1,000円を支払う場合に、1円玉1,000枚で支払うこともできそうですが、実は法律で原則として貨幣は20枚までとしています。
貨幣は、額面価格の二十倍までを限り、法貨として通用する。
通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(昭和62年法律第42号)第7条
「貨幣は20枚まで」については、財務省でも紹介されています。
例えば、500円玉(額面価格)の場合は、額面価格の20倍までなので、10,000円(=500円×20枚)まで支払うことができます。1円玉の場合は、20円(=1円×20枚)までですね。
取引の相手方の了解が得られるなら貨幣20枚を超えて支払うこともできると財務省が紹介していますが、自分が支払う側なら貨幣はそれぞれ20枚までで支払い、自分が支払を受ける側で金額の確認が難しい場合は、支払をお断りしましょう。
知らなかった~!
現金で意地悪な支払方法をする人がいたら、この法律を理由に断りましょう。
請求書等の金額は、訂正できない(訂正印も不可)こととする法律
会計課に「請求書の金額が間違っているので、請求書を出し直してもらってください。」と言われたことはありませんか?その理由がこちらです。
前項ニ規定スル諸書類帳簿ノ記載事項ニ付訂正、挿入又ハ削除ヲ為サムトスルトキハ二線ヲ画シテ其ノ右側又ハ上位ニ正書シ其ノ削除ニ係ル文字ハ仍明ニ読得ヘキ為字体ヲ存スルコトヲ要ス但シ金銭又ハ物品ノ受授ニ関スル諸証書ノ数字ハ之カ訂正ヲ為スコトヲ得ス数字以外ノ事項ニ付訂正、挿入又ハ削除ヲ為シタルトキハ其ノ字数ヲ欄外ニ記載シ作製者之ニ押印シ又ハ署名スルコトヲ要ス
大正11年大蔵省令第43号(会計法規ニ基ク出納計算ノ数字及記載事項ノ訂正ニ関スル件)第2条第2項
「訂正ヲ為スコトヲ得ス」。つまり、「訂正できない」ということです。
こんなことまで決まっているんだね。
改ざんトラブルにつながりそうだしね。
外国人の押印は、サインでOKとする法律
契約書は、原則として押印が必須となる事例が多いと思いますが、外国人は署名で済むと法律で定められています。
第一条 法令ノ規定ニ依リ署名、捺印スヘキ場合ニ於テハ外国人ハ署名スルヲ以テ足ル
明治三十二年法律第五十号(外国人ノ署名捺印及無資力証明ニ関スル法律)第1条第1項
捺印ノミヲ為スヘキ場合ニ於テハ外国人ハ署名ヲ以テ捺印ニ代フルコトヲ得
明治三十二年法律第五十号第1条第2項
日本人は印鑑を用意するけど、外国人は印鑑を用意しないの?
日本の文化で外国人を縛るのはよくないと思ったのでしょうね。
題名のない法律
私たちが目にする法律では、題名があるのがほとんどです。例えば、地方公務員法であれば、「地方公務員法」がその法律の題名です。
しかし、当初から題名を付けることとなっていたわけではなく、古い法律の中には題名のない法律が存在します。
それについて、参議院法制局Webサイト「題名のない法律」で紹介されていましたので引用します。
もっとも、昭和22年ごろまでは、既存の法律の一部を改正する法律、一時的な問題を処理するために制定される法律、内容の比較的重要でない法律などについては、題名が付けられないことも少なくありませんでした。当時制定された題名のない法律のいくつかは、現存しています。例えば、現存する昭和22年法律第82号を官報で見ると、「朕は、帝國議会の協賛を経た國会予備金に関する法律を裁可し、ここにこれを公布せしめる。」という公布文、御名、御璽、大臣名及び「法律第八十二号」という記載の次が「第一條 各議院の予備金は…」となっており、題名が付されていません。
参議院法制局Webサイト「題名のない法律」
このような題名のない法律は、「昭和22年法律第82号」と呼ぶしかないように思えますが、それでは法律の内容がよく分からないため、公布文に引用されている字句をその法律の名称として用いられています。この名称を件名といいます。例えば、昭和22年法律第82号の件名は、「国会予備金に関する法律」となります。
詳しくは、参議院法制局Webサイト「題名のない法律」を御覧ください。
e-Gov法令検索でたまに法律番号が先頭にくる法律がありますが、それが題名のない法律でした。
法律の作り方は、最初から今のルールで決まってたわけじゃなかったんだね。
法律番号のない法律
法律には、必ず法律番号があります。
法律番号は、公布年、法形式及び公布された順に付けられた番号の3つで構成されて作られます。
例えば、地方公務員法であれば、昭和25年12月13日に公布され、公布された年の261番目の法律なので、法律番号は「昭和25年法律第261号」となります。
なお、法律ではなく、政令であれば「〇〇年政令第〇号」(政令番号)、省令であれば「〇〇年総務省令第〇号」(省令番号。なお、この例は、総務省令)となります。
しかし、法律なのに法律番号でない番号が付されているものがあります。これについては、参議院法制局Webサイト「法律番号が付されていない法律」で紹介されていましたので、引用します。
第二次大戦終結の際にわが国はポツダム宣言を受諾して、連合国の占領下に置かれましたが、その際、「ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件」(昭和20年勅令542号)(以下「ポツダム緊急勅令」という。)という勅令が発せられました。この勅令には、政府がポツダム宣言の受諾に伴い連合国最高司令官のなす要求事項を実施するために特に必要がある場合には、命令をもって所要の定めをし、かつ、罰則を定めることができるということが定められていました。つまり、国民に対して罰則で担保された義務を課すことは本来法律をもって定めるべき事項ですが、これを命令で定めることができるということとされていたのです。ポツダム緊急勅令に基づいて発せられた命令は、ポツダム命令(勅令、政令、省令等)と呼ばれています。ポツダム緊急勅令自体は、平和条約の最初の効力発生の日〔昭和27年4月28日〕に廃止されましたが、ポツダム命令については、それぞれ、法律によって廃止されたり、法律としての効力を有するものとされたりして、整理がなされました。その結果、現在でも法律としての効力を有するポツダム命令があるのです。「出入国管理及び難民認定法」は、このポツダム命令の一つですが、「ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律」(昭和27年法律第126号)第4条において、「法律としての効力を有するものとする。」とされたのです。また、当初は「出入国管理令」という政令らしい題名でしたが、昭和57年に、難民の地位に関する条約又は難民の地位に関する議定書の締結に伴う改正の際に現在の題名に改められました。
参議院法制局Webサイト「法律番号が付されていない法律」
このほかにも、次の法律があります。出てきたら注意しましょう。
すごい豆知識!これを法律扱いって、気づけないなぁ。
法令番号の知識があると、取扱いの気になる内容になりますね。
「こんな法律があったとは!」と思う法律の情報提供のお願いと法律の雑学が掲載されている書籍の紹介
以上が私が見つけた思わず「そんな法律があったとは!」と思ってしまう法律です。意外と知らなかったのではないでしょうか?
もしあなたが「ほかにもこんな法律知ってる!」というものがあれば、是非私に情報提供をお願いします。私がうまくまとめられるものなら、ここに掲載したいと思います。
このほか、法律の雑学的なところで興味深い書籍もあるので、次の書籍を御覧になってみてください。
元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術 [改訂第4版]
法令の仕組みの一般論を説明している本だね。それでも初耳だったりする。
法令について何も知らないなら、ここから始めるのも面白いですよ。
この2冊は、本当にトリビア(雑学)だね。知らなくても問題ないかもしれないけど、知ってたらすごい。
ちょっと楽しくなりそうですね。もっと知識を広げたい場合は、御覧ください。
これらのほか、私のブログでは、条例の改正の進め方の記事も掲載しています。興味があれば、是非御覧ください。
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