ブログ「公務員ってどうなの?」のこむぞうです。
近年の傾向では、給与改定が毎年行われています。
私も随分と給与改定の条例改正を行ってきましたので、そのノウハウをここでお伝えしたいと思います。
次のように思われる人は、是非この記事のこの先も御覧ください。
- 「給与担当になったけど条例改正が初めてで不安」
- 「給与改定ってどう行ってるの?」
条例案の提出までのスケジュールを確認
地方公務員の給与改定は、国家公務員の給与改定が決まって初めて動き出すことができます。
大きな流れは、人事給与スケジュール8月の「人事院勧告への対応」のとおりです。
具体的にする作業は、こんな感じです。
- ①一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号。以下「給与法」という。)の一部改正案の施行期日を確認
- 附則(法律案の最後の方)に「この法律は、令和〇年〇月〇日から施行する。」と書かれている部分が施行期日です。
- ②議会の提案時期の決定
- 施行期日より前に終わる議会の会期、というのが最低条件。不利益な改正なら周知期間を設けて、議会の会期の最終日から施行期日までの期間を長く空ける必要があります。
- ③ 給与法と給与条例の一致箇所を特定
- 給与法と自治体の給与条例は、言い回し、構成等がほぼ同じにしている自治体が多いと思います。なので、おおむねこの法律の改正箇所は、給与条例でも同様の箇所が見つかります。それぞれの自治体のシステムの用語の検索で探してみましょう。
- ④条例案の作成
- 最後は、法律案のものまねをするだけです。作成する書類は、それぞれの自治体でルールがあると思いますので、よく確認しましょう。
なお、条例案の提出のタイミングについては、このようなことがいわれています。
⑵ 地方公共団体における職員の給与改定の実施は、国における給与法の改正の措置を待って行うべきものであり、国に先行して行うことのないようにすること。
地方公務員の給与改定等に関する取扱いについて(令和5年10月20日付け総行給第55号・総行公第102号・総行女第23号総務副大臣通知)
地方議会の会期のタイミングがあるから、国会に合わせるのは難しいけどね。
つまり、次の2点を守らなければなりません。
- 国家公務員の給与改定の法律案を国会に提出した後に、自治体は地方議会に給与改定の条例案を提出すること。
- 期末手当又は勤勉手当の支給割合を引き下げる条例は、支給基準日(12月支給なら、同月1日)までに公布すること。
条例改正案の議会の議決は、給与法改正案の成立後に行われること。
従来は、「給与法改正案の成立を待つ」というところまで総務省からいわれていましたが、最近は国会への法律案の提出と地方議会への条例案の提出のタイミングがうまく合わないので、状況によっては「給与法改正案の成立を待たず、条例改正案を議会に提出することもやむを得ない」(令和2年度全国人事担当課長・市町村担当課長会議における質疑応答)とされる傾向があります。
ただし、「給与法改正案成立前の条例改正案「提出」はやむを得ないものの、「議決」については、例年どおり国における給与法の成立後に行われる必要があります」(令和2年10月21日付けの愛知県総務局市町村課からのメール抜粋)と連絡がありましたので、条例案の提出を給与法改正案の提出後とし、議決は給与法改正案の成立後とすることになりそうです。
資料収集
内閣官房Webサイトの「国会提出法案」から、 「一般職の職員の給与に関する法律」等の改正について探し、次の資料を入手しましょう。
- 概要
- 法律案
- 新旧対照表
これが終わったらいよいよ条例案の作成だけど、給与の増額改定と減額改定でかなり難易度が違うから、まずは増額改定から説明するね。
給与の増額改定の場合
給与の増額改定は、職員の利益に当たるため、進めやすいと思います。
なお、12月の期末手当又は勤勉手当に反映させる場合は、12月1日が基準日となりますので、できれば同日より前に条例が公布されるよう進めましょう。
遡及適用の措置をしているでしょうから、改正前の期末手当等の額で支給して、改正後の期末手当等の額に不足している差額を後日支給するのが手間でなければ問題ありません。
また、支給年分の年末調整に反映させてきれいに整理したいのであれば、早めに進めた方がいいでしょうね。
給料、期末手当及び勤勉手当の増額改定に係る条例案の作成
法律案の資料を入手したら、早速条例案を作りましょう!
まずは、新旧対照表を見てみましょう。
改正箇所が見つかったら、その改正箇所が給与条例のどこにあるのか探しましょう。
とはいえ、例を挙げないと分かりづらいですね。
では、増額改定の事例として、令和5年人事院勧告として勧告された給料月額並びに期末手当及び勤勉手当の支給率を改正する例で進めてみましょう(分かりやすくするために在宅勤務等手当の新設及びフレックスタイム制の更なる柔軟化に関する部分は、除いています。)。
職員区分 | 4月の給料 | 12月の期末手当 | 12月の勤勉手当 | 4月以降の期末手当 | 4月以降の勤勉手当 |
いわゆる正規職員( 指定職俸給表と特定管理職員を除く。) | 引上げ | 100分の125 | 100分の105 | 100分の122.5 | 100分の102.5 |
再任用職員 | 引上げ | 100分の70 | 100分の50 | 100分の68.75 | 100分の48.75 |
特定任期付職員 | 引上げ | 100分の175 | 100分の170 |
多くの自治体で採用されていない指定職俸給表の適用を受ける職員と特定管理職員は、この例では除いてるよ。
これらの制度がある自治体は、それぞれ対応しましょう。
給料で改正対象となる条文
国家公務員だと給与法に別表として置かれている行政職俸給表(一)等の俸給表です。十中八九その表を全部改正をして給料を改正するので、改正するだけならとても簡単です。
期末手当で改正対象となる条文
国家公務員の期末手当で改正対象となる条文は、次のとおり
2 期末手当の額は、期末手当基礎額に百分の百二十(行政職俸給表(一)の適用を受ける職員でその職務の級が七級以上であるもの並びに同表及び指定職俸給表以外の各俸給表の適用を受ける職員でその職務の複雑、困難及び責任の度等がこれに相当するもの(これらの職員のうち、人事院規則で定める職員を除く。第十九条の七第二項第一号イ及び第二号において「特定管理職員」という。)にあつては百分の百、指定職俸給表の適用を受ける職員にあつては百分の六十二・五)を乗じて得た額に、基準日以前六箇月以内の期間における当該職員の在職期間の次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める割合を乗じて得た額とする。
給与法第19条の4第2項
3 定年前再任用短時間勤務職員に対する前項の規定の適用については、同項中「百分の百二十」とあるのは「百分の六十七・五」と、「百分の百、」とあるのは「百分の五十七・五、」とする。
給与法第19条の4第3項
2 特定任期付職員に対する給与法第三条第一項、第七条、第十一条の五、第十一条の九第一項、第十九条の三第一項、第十九条の四第二項、第二十条及び第二十一条第一項の規定の適用については、給与法第三条第一項中「この法律」とあるのは「この法律及び一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成十二年法律第百二十五号。以下「任期付職員法」という。)第七条の規定」と、給与法第七条中「この法律」とあるのは「この法律及び任期付職員法第七条の規定」と、給与法第十一条の五中「指定職俸給表」とあるのは「指定職俸給表又は任期付職員法第七条第一項の俸給表」と、給与法第十一条の九第一項中「指定職俸給表」とあるのは「指定職俸給表又は任期付職員法第七条第一項の俸給表」と、給与法第十九条の三第一項中「以下「管理監督職員等」」とあるのは「任期付職員法第七条第一項の俸給表の適用を受ける職員を含む。以下「管理監督職員等」」と、給与法第十九条の四第二項中「百分の百二十」とあるのは「百分の百六十五」と、給与法第二十条中「第六条」とあるのは「任期付職員法第七条」と、給与法第二十一条第一項中「この法律」とあるのは「この法律及び任期付職員法第七条」とする。
一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成12年法律第125号)第8条第2項
注意!「法律は縦書きなので、数字は漢数字」
法令にはいろいろルールがあります。そのうち、「縦書きなら数字は、漢数字」というルールがあります(ネット上でみる法令は、縦書きの法令を無理に横書きにしているので漢数字を算用数字(1、2、3等)に直すことはありません。)。
キーワードで検索するときは、法律がこのような性質を持っていることを理解し、漢数字のままで検索するかどうかを事前によく考えましょう。
勤勉手当で改正対象となる条文
国家公務員の勤勉手当で改正対象となる条文は、次のとおり
イ ロに掲げる職員以外の職員 当該職員の勤勉手当基礎額に百分の四十五(特定管理職員にあつては、百分の五十五)を乗じて得た額の総額
給与法第19条の7第2項第2号イ
イ ロに掲げる職員以外の職員 当該職員の勤勉手当基礎額に当該職員がそれぞれその基準日現在(退職し、又は死亡した職員にあつては、退職し、又は死亡した日現在。次項において同じ。)において受けるべき扶養手当の月額並びにこれに対する地域手当、広域異動手当及び研究員調整手当の月額の合計額を加算した額に百分の九十五(特定管理職員にあつては、百分の百十五)を乗じて得た額の総額
給与法第19条の7第2項第1号イ
期末手当で改正対象となる条文のときに説明したけど、法律は縦書きなので数字が漢数字になるけど、横書きの条例の自治体は、数字が算用数字(1、2、3等)になるから注意してね。
給与法の条文に対応する給与条例の条文の探し方
条例でこれに当たる条文はどこにあるのか。
恐らく多くの自治体で職員だけが使える条例等の検索システムがあると思いますので、そのキーワードとして、給与法第19条の7第2項中の一部(例えば「勤勉手当基礎額に」、「それぞれその基準日現在(退職し、又は死亡した職員」等)を選んで本文検索をしてみましょう。
どう?該当する条例の条文は、見つかった?
うまくいかない場合は、キーワードを変えていろいろやってみましょう。
条例案の作り方
改正箇所が分かったら、それぞれの自治体のルールを下に書類を作成しましょう。
目標は、これです。
- 公布の日 令和5年11月24日(令和5年10月20日付け臨時議会提出)
- 施行期日 公布の日(一部令和6年4月1日及び令和7年4月1日)
これをほぼそのまま自治体の条例案にしてしまえばいいのです!
条例案の体裁(題名は、左3文字を空けるとか、加えられた条、項、号等は、2行目から左1文字を空けるとか)がこの記事でうまく表現できませんが、例とするとこんな感じになります。なお、分かりやすくするために、令和5年度の給与改定のうち、在宅勤務等手当の新設及びフレックスタイム制の更なる柔軟化に関する部分は、除いています。導入する自治体は、御注意ください。
条例案(1つの条例を改正する場合)
〇〇市職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第1条 〇〇市職員の給与に関する条例(昭和〇〇年〇〇市条例第〇号)の一部を次のように改正する。
第〇条第2項中「100分の120」を「100分の125」に改め、同条第3項中「100分の120」を「100分の125」に、「100分の67.5」を「100分の70」に改める。
第□条第2項第1号中「100分の100」を「100分の105」に改め、同項第2号中「100分の47.5」を「100分の50」に改める。
別表第1及び別表第2を次のように改める。
(別表第1及び別表第2 略)※改正後の給与法の各俸給表の必要な職務の級までを取り出して作成しましょう。
第2条 〇〇市職員の給与に関する条例の一部を次のように改正する。
第〇条第2項中「100分の125」を「100分の122.5」に改め、同条第3項中「100分の125」を「100分の122.5」に、「100分の70」を「100分の68.75」に改める。
第□条第2項第1号中「100分の105」を「100分の102.5」に改め、同項第2号中「100分の50」を「100分の48.75」に改める。
附 則
(施行期日等)
1 この条例は、公布の日から施行する。ただし、第2条の規定は、令和6年4月1日から施行する。
2 第1条の規定( 〇〇市職員の給与に関する条例(以下この項及び次項において「給与条例」という。)第〇条第2項及び第3項並びに第□条第2項の改正規定を除く。次項において同じ。)による改正後の給与条例(同項において「新条例」という。)の規定は、令和5年4月1日から適用する。
(給与の内払)
3 新条例の規定を適用する場合には、第1条の規定による改正前の給与条例の規定に基づいて支給された給与は、新給与条例の規定による給与の内払とみなす。
(委任)
4 前項に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が規則で定める。
条例案(複数の条例を一本で改正する場合)
〇〇市職員の給与に関する条例及び〇〇市一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
(〇〇市職員の給与に関する条例等の一部改正)
第1条 〇〇市職員の給与に関する条例(昭和〇〇年〇〇市条例第〇号)の一部を次のように改正する。
第〇条第2項中「100分の120」を「100分の125」に改め、同条第3項中「100分の120」を「100分の125」に、「100分の67.5」を「100分の70」に改める。
第□条第2項第1号中「100分の100」を「100分の105」に改め、同項第2号中「100分の47.5」を「100分の50」に改める。
別表第1及び別表第2を次のように改める。
(別表第1及び別表第2 略)※改正後の給与法の各俸給表の必要な職務の級までを取り出して作成しましょう。
第2条 〇〇市職員の給与に関する条例の一部を次のように改正する。
第〇条第2項中「100分の125」を「100分の122.5」に改め、同条第3項中「100分の125」を「100分の122.5」に、「100分の70」を「100分の68.75」に改める。
第□条第2項第1号中「100分の105」を「100分の102.5」に改め、同項第2号中「100分の50」を「100分の48.75」に改める。
(〇〇市一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例の一部改正)
第3条 〇〇市一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例(平成〇〇年〇〇市条例第〇号)の一部を次のように改正する。
第〇条第1項の表を次のように改める。
(第〇条第1項の表 略)※改正後の一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律第7条第1項の表の必要な職務の級までを取り出して作成しましょう。
第□条第2項中「100分の165」を「100分の175」に改める。
第4条 〇〇市一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を次のように改正する。
第□条第2項中「100分の175」を「100分の170」に改める。
附 則
(施行期日等)
1 この条例は、公布の日から施行する。ただし、第2条及び第4条の規定は、令和6年4月1日から施行する。
2 第1条の規定( 〇〇市職員の給与に関する条例(以下この項及び次項において「給与条例」という。)第〇条第2項及び第3項並びに第□条第2項の改正規定を除く。次項において同じ。)による改正後の給与条例(同項において「新給与条例」という。)及び第3条の規定(〇〇市一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例(以下この項及び次項において「任期付職員条例」という。)第□条第2項の改正規定を除く。次項において同じ。)による改正後の任期付職員条例(次項において「新任期付職員条例」という。)の規定は、令和5年4月1日から適用する。
(特定任期付職員に係る最高の号泣を超える給料月月の切替え)
3 令和5年4月1日(以下この項において「切替日」という。)の前日において任期付職員条例第〇条第3項の規定による給料月額を受けていた職員の切替日における給料月額は、改正後の任期付職員条例第〇条第1項に規定する給料表に掲げる号給の給料月額との権衡を考慮して市長が規則で定める。
(給与の内払)
4 新給与条例及び新任期付職員条例の規定を適用する場合には、第1条の規定による改正前の給与条例又は第3条の規定による改正前の任期付職員条例の規定に基づいて支給された給与は、それぞれ新給与条例又は新任期付職員条例の規定による給与の内払とみなす。
(委任)
5 前項に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が規則で定める。
会計年度任用職員の条例は、上記の例ではいわゆる正規職員の「〇〇市職員の給与に関する条例」を準用している扱いなので改正対象にしていないけど、準用していない場合は、同様に改正対象に加えてね。
なお、複数の条例を一本で改正する場合で改正する条例が3本以上になるときの題名は、「〇〇市職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例」のように「等」でまとめられます。御注意ください。
この「第〇条中「・・・」を「・・・・・」に改める。」といった改正のための言い回し等については、ルールがあります。自治体ごとに様々ですので、条例審査の担当者等によく確認しましょう。
なお、言い回し等のルールは、法令のまねをしていることが多いため、法令どおりとなる傾向があります。もしその場合は、こちらの書籍「法制執務詳解 新版III」によくまとめられています。「ちょっと興味がある」と思ったら是非開いてみてください。
この「言い回し等」は、ルールブックやマニュアルがないので、こうした本に頼るのが近道です。
この本なら具体例がとても多いので、困ったときに頼りましょう!
給与の減額改定の場合
給与の減額改定は、職員の不利益に当たるため、法も厳格な取扱いとなります。
給与の増額改定と比べると慎重に計画し、対処する必要がありますので、しっかり調べて進めましょう。
給与の減額改定に係る条例案の作成
給与の増額改定に係る条例案と同様、法律案の資料を入手したら、早速条例案を作りましょう!
まずは、新旧対照表です。
改正箇所が見つかったら、その改正箇所が給与条例のどこにあるのか探しましょう。
こちらについても例を挙げて説明します。
では、令和3年人事院勧告として勧告された期末手当の支給率を改正する例で進めてみましょう。
職員区分 | 12月の期末手当 | 4月以降の期末手当 |
いわゆる正規職員( 指定職俸給表と特定管理職員を除く。) | 100分の112.5 | 100分の120 |
再任用職員 | 100分の62.5 | 100分の67.5 |
特定任期付職員 | 100分の157.5 | 100分の162.5 |
給与の増額改定と同様、多くの自治体で採用されていない指定職俸給表の適用を受ける職員と特定管理職員は、この例では除きます。これらの制度がある自治体は、それぞれ対応しましょう。
この例で改正対象となる国家公務員に適用されていた当時の条文は、次のとおり
2 期末手当の額は、期末手当基礎額に百分の百二十七・五(行政職俸給表(一)の適用を受ける職員でその職務の級が七級以上であるもの並びに同表及び指定職俸給表以外の各俸給表の適用を受ける職員でその職務の複雑、困難及び責任の度等がこれに相当するもの(これらの職員のうち、人事院規則で定める職員を除く。第十九条の七第二項において「特定管理職員」という。)にあつては百分の百七・五、指定職俸給表の適用を受ける職員にあつては百分の六十七・五)を乗じて得た額に、基準日以前六箇月以内の期間におけるその者の在職期間の次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める割合を乗じて得た額とする。
給与法第19条の4第2項
3 再任用職員に対する前項の規定の適用については、同項中「百分の百二十七・五」とあるのは「百分の七十二・五」と、「百分の百七・五」とあるのは「百分の六十二・五」と、「百分の六十七・五」とあるのは「百分の三十五」とする。
給与法第19条の4第3項
2 特定任期付職員に対する給与法第三条第一項、第七条、第十一条の五、第十一条の九第一項、第十九条の三第一項、第十九条の四第二項、第二十条及び第二十一条第一項の規定の適用については、給与法第三条第一項中「この法律」とあるのは「この法律及び一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成十二年法律第百二十五号。以下「任期付職員法」という。)第七条の規定」と、給与法第七条中「この法律」とあるのは「この法律及び任期付職員法第七条の規定」と、給与法第十一条の五中「指定職俸給表」とあるのは「指定職俸給表又は任期付職員法第七条第一項の俸給表」と、給与法第十一条の九第一項中「指定職俸給表」とあるのは「指定職俸給表又は任期付職員法第七条第一項の俸給表」と、給与法第十九条の三第一項中「以下「管理監督職員等」」とあるのは「任期付職員法第七条第一項の俸給表の適用を受ける職員を含む。以下「管理監督職員等」」と、給与法第十九条の四第二項中「百分の百二十七・五」とあるのは「百分の百六十七・五」と、給与法第二十条中「第六条」とあるのは「任期付職員法第七条」と、給与法第二十一条第一項中「この法律」とあるのは「この法律及び任期付職員法第七条」とする。
一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律(平成12年法律第125号)第8条第2項
では、条例でこれに当たる条文はどこにあるのか。
恐らく多くの自治体で職員だけが使える条例等の検索システムがあると思いますので、そのキーワードとして、給与法第19条の4第2項中の一部(例えば「期末手当の額は、期末手当基礎額に」、「適用を受ける職員でその職務の複雑、困難及び責任の度等がこれに相当するもの」等)を選んで本文検索をしてみましょう。
注意!「法律は縦書きなので、数字は漢数字」
法令にはいろいろルールがあります。そのうち、「縦書きなら数字は、漢数字」というルールがあります(ネット上でみる法令は、縦書きの法令を無理に横書きにしているので漢数字を算用数字に直すことはありません。)。
キーワードで検索するときは、法律がこのような性質を持っていることを理解し、漢数字のままで検索するかどうかを事前によく考えましょう。
どう?該当する条例の条文は、見つかった?うまくいかない場合は、キーワードを変えていろいろやってみよう!
改正箇所が分かったら、それぞれの自治体のルールを下に書類を作成しましょう。
目標は、これです。
- 公布の日 令和4年4月13日
- 施行期日 公布の日
これをほぼそのまま自治体の条例案にしてしまえばいいのです!
とはいえ、この期末手当の減額は、減額したいタイミングを令和3年12月の期末手当でしたかったところ、令和4年6月の期末手当にするという特別な方法なので、特例の経過措置もあって複雑です。具体例としては、令和3年11月30日に公布された扱いとして示します。
条例案の体裁(題名は、左3文字を空けるとか、加えられた条、項、号等は、2行目から左1文字を空けるとか)がこの記事でうまく表現できませんが、例とするとこんな感じになります。
条例案(1つの条例を改正する場合)
〇〇市職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
第1条 〇〇市職員の給与に関する条例(昭和〇〇年〇〇市条例第〇号)の一部を次のように改正する。
第〇条第2項中「100分の127.5」を「100分の112.5」に改め、同条第3項中「100分の127.5」を「100分の112.5」に、「100分の72.5」を「100分の62.5」に改める。
第2条 〇〇市職員の給与に関する条例の一部を次のように改正する。
第〇条第2項中「100分の112.5」を「100分の120」に改め、同条第3項中「100分の112.5」を「100分の120」に、「100分の62.5」を「100分の67.5」に改める。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。ただし、第2条の規定は、令和4年4月1日から施行する。
条例案(複数の条例を一本で改正する場合)
〇〇市職員の給与に関する条例及び〇〇市一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を改正する条例
(〇〇市職員の給与に関する条例等の一部改正)
第1条 〇〇市職員の給与に関する条例(昭和〇〇年〇〇市条例第〇号)の一部を次のように改正する。
第〇条第2項中「100分の127.5」を「100分の112.5」に改め、同条第3項中「100分の127.5」を「100分の112.5」に、「100分の72.5」を「100分の62.5」に改める。
第2条 〇〇市職員の給与に関する条例の一部を次のように改正する。
第〇条第2項中「100分の112.5」を「100分の120」に改め、同条第3項中「100分の112.5」を「100分の120」に、「100分の62.5」を「100分の67.5」に改める。
(〇〇市一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例の一部改正)
第3条 〇〇市一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例(平成〇〇年〇〇市条例第〇号)の一部を次のように改正する。
第〇条第2項中「100分の127.5」を「100分の112.5」に、「100分の167.5」を「100分の157.5」に改める。
第4条 〇〇市一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する条例の一部を次のように改正する。
第〇条第2項中「100分の112.5」を「100分の120」に、「100分の157.5」を「100分の162.5」に改める。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。ただし、第2条及び第4条の規定は、令和4年4月1日から施行する。
会計年度任用職員の条例は、上記の例ではいわゆる正規職員の「〇〇市職員の給与に関する条例」を準用している扱いなので改正対象にしていませんが、準用していない場合は、同様に改正対象に加えましょう。
なお、複数の条例を一本で改正する場合で改正する条例が3本以上になるときの題名は、「〇〇市職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例」のように「等」でまとめられます。御注意ください。
この「第〇条中「・・・」を「・・・・・」に改める。」といった改正のための言い回し等については、ルールがあります。自治体ごとに様々ですので、条例審査の担当者等によく確認しましょう。
なお、言い回し等のルールについては、給与の増額改定に係る条例案でも示したこちらの書籍「法制執務詳解 新版III」をもう一度紹介しておきます。「ちょっと興味がある」と思ったら是非開いてみてください。
給与の減額を遅らせる場合もある。
令和4年の改正(一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第17号))のように、令和3年度中の期末手当で減額したかった額を令和4年6月の期末手当で減額するというやり方は、本来いいものではありません。
しかし、立法手続の問題で遅れてでも減額する必要もあり、それは、将来の給与を減額するという手法であれば認められます。
これについては、人によっては、令和3年12月に支給した期末手当を減額したという視点で「不利益不遡及の原則」に反すると主張する人もいるでしょう。
不利益不遡及の原則は,事後に締結された労働協約又は事後に定められた就業規則を遡及的に適用することにより,既に発生した具体的権利としての賃金請求権等を処分し,又は変更することが許されないというものであり,判例(最一小判平成元年9月7日裁判集民事157巻433頁,最三小判平成8年3月26日民集50巻4号1008頁等)により確立した法理である。
平成14年改正給与法損害賠償請求事件(東京高裁平成17年9月29日判決)
つまり、不利益不遡及の原則っていうのは、今までOKと言っていたことだったのに、後になってルールを変えて「過去の〇〇をダメってことにしたから返して。」っていうのは、ダメってことだね!
そのとおり。そして、この令和4年の給与の減額改定もそれに当たるという意見だな。
この不利益不遡及の原則がよくない理由は、こちらの説明が分かりやすかったのでこちらを引用します。
条例・規則は、それが施行されると、施行の時点以後将来に向かって効力を生じる。ところが、場合によっては、条例・規則の効力を過去にさかのぼって作用させる必要が生じることがあり、この場合には、条例・規則を遡及適用させることになる。遡及適用自体は、一度築かれた過去の法律関係を覆すことであり、法的安定性の点から、好ましいものではない。特に、罰則の遡及適用は、憲法上許されない(憲法第39条)。しかし、遡及適用が住民の権利義務に影響しない場合やかえって住民の利益になるような場合には許される、と解されている。
法制執務詳解 新版III
それなのにこの方法が認められたのは、これが法律の施行の日(令和4年4月13日)から令和4年6月の期末手当という将来の期末手当を減額するという法律だからです。
減額する額が令和3年12月の期末手当で減額予定だった額を使うというだけで、飽くまで将来の期末手当を減額するってことだね。
そのとおり。実際、令和3年12月の期末手当を支給された後に退職した職員は、令和4年6月の期末手当を支給されないから減額するタイミングがなく、令和3年12月の期末手当を減額されることなく支給されたままになるしね。
これが適法かどうかについては、実は過去に同様の給与減額が行われており、裁判も行われています(平成14年改正給与法損害賠償請求事件(東京高裁平成17年9月29日判決))。
この裁判で適法かどうか争われた改正とは、俸給(給料)を下げる改正があり、その減額するタイミングが遅れたので将来の期末手当の減額で調整するというものでした(一般職の職員の給与にに関する法律等の一部を改正する法律(平成14年法律第106号))。
以下、当時の裁判所の判断です。
本件特例措置は,前記のとおり,改正給与法施行後に支払時期の到来する平成14年12月期の期末手当の額を調整するものであって,既に発生確定した給与請求権を処分し,又は変更するものではなく,また,改正給与法を遡及適用するものでもない。・・・。以上のとおり,法律により国家公務員の給与が定められる法制度の下において,公務員の業務及びその身分の特殊性から民間労働者と異なった特殊性があるものの,そのような特殊性を考慮した上で民間準拠による給与水準の確保の手法は,正当であるというべきである。国家公務員給与を民間に準拠し,官民の均衡を保つという方針を採った場合には,公務員の月例給を民間の水準にまで引き下げることもやむを得ない措置として否定されず,しかも,現行制度上,毎年4月1日における官民の給与状況を調査して勧告がされることからすると,調査又は勧告の時点から給与の改定に至るまでの時間の経過が必至であるために,官民の較差を年間の給与総額において均衡を保つための措置として,すでに発生している俸給等に係る措置を含めて相応の調整措置を講じることも避けがたい。・・・。そして,本件人事院勧告が,不利益不遡及の原則を踏まえて,改定を同年4月には遡及させないで年間の官民の給与を均衡させるという目的は,正当であり,かつ,速やかに調整が行われる必要があること及び弾力的な調整として月例給より特別給を対象とすることとして,勧告後の期末手当を対象として4月からの1年間で均衡を採るように措置をする方法は相当であり,本件全証拠によっても,上記の調整措置として,本件特例措置に代わるもので本件特例措置より適切なものを見出すことは困難であるから,本件特例措置は,許容された裁量の範囲内にあり,合理的であるということができる。・・・。国家公務員にとっては,本件特例措置により12月期の期末手当が減額されることは手痛いことであるが,民間の給与水準との均衡を考慮した措置として,受容するのもやむを得ないものである。
平成14年改正給与法損害賠償請求事件(東京高裁平成17年9月29日判決抜粋)
判決文の全文を見たい場合は、こちらを見てね。
話が長くなりましたが、つまり、令和4年の改正は、令和3年12月の期末手当を減額するという手法ではなく、将来の令和4年6月の期末手当で減額するという手法としたため、不利益不遡及の原則に当たらず、適法に減額できるのです。
職員組合(労働組合)との交渉
条例案の作成方法については、上記のとおりですが、同時並行で職員組合との交渉についても進めましょう。
給与の増額改定であっても、職員に影響のある問題です。職員組合がある自治体は、必ず職員組合との交渉を忘れずに進めましょう。
給与改定は報道されるから、職員組合側も把握していると思うけどね。
やらなければならないこととはいえ、忘れると双方の関係を壊しますから、必ず配慮しましょう。
特別職の職員の改正も検討しよう。
上記の例では、特別職の職員(議会の議員、市町村長、副市町村長、教育長等)を含めていませんが、特別職の国家公務員に係る期末手当の改正も必要か、セットで検討しましょう。
特別職の国家公務員の給与改定は、国会に法律案を提出する段階になって初めて判明します。特別職の職員の給与に関する法律(昭和24年法律第252号)の改正があったら、特別職の職員の期末手当の改正を行うかどうかも検討しましょう。
ちなみに令和5年の改正は、こちら
- 公布の日 令和5年11月24日(令和5年10月20日付けで臨時議会提出)
- 施行期日 公布の日(一部令和6年4月1日)
一般職の職員の給与改定をするなら、自然な流れで特別職の給与改定もしないと説明が難しいと思いますので、よく御検討ください。
情報収集
条例案の作成は、上記のとおりでとりあえず一安心。
しかし、これで終わりではありません。
地方公務員法第24条第2項では、次のように定められています。
2 職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。
地方公務員法(昭和25年法律第261号)第24条第2項
したがって、他の状況を把握しておく必要があります。
把握するところは、次のとおり
- 国
- 都道府県
- 周囲の自治体
少なくともどう議会に提案するか(臨時議会を開いて提案するか定例会で通常どおりに提案するかとか。)くらいの確認はしましょう。
影響額の算出
議会で十中八九聞かれることとなります。
条例改正によりいくら影響が出るか算出しましょう。
まとめ
給与改定の条例案の作成については、以上です。
つまり、国家公務員の給与改定の法律案をまねすればいい!ということです。
今回に限りませんが、人事給与関係の条例、規則等は、国家公務員に適用される人事給与関係の法令(法律、人事院規則等)をまねしています。
人事給与担当者は、慌てなくても大丈夫!
全てまねすればいいのです!
改正される法令をまねしている条例、規則等を見つけさえすれば簡単にできます。
怖がらずにチャレンジしてみましょう!
もしまねをする法令のない条例、規則等の場合でしたら、こちらの記事を参考にして取り掛かりましょう。
やってみて分からなければ、条例審査の担当者に問い合わよう。きっとゴールが見えてくるよ!
「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行く、ただ一つの道」(イチロー選手)といいます。失敗を恐れず、まず一歩を踏み出すことが大事です。がんばりましょう!
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