【令和4年1月1日等から】傷病手当金制度と保険料免除制度の改正

働き方のヒント(人事給与)
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 ブログ「公務員ってどうなの?」のこむぞうです。

 今回は、余り注目されなさそうな内容ですが、保険証や年金関係の法改正がありましたので御紹介したいと思います。

 その法改正は、次のとおりです。

  • 公布の日 令和3年6月11日
  • 施行期日 令和4年1月1日、同年10月1日等

 影響の大きいところを簡単にいえば、保険証を発行しているところ(協会けんぽ、共済組合等)に、主に次の改正が行われます。

  • 傷病手当金支給のために資料が提供される。
  • 健康保険の傷病手当金の支給期間が長くなる。
  • 健康診断結果を提供しなければならない義務ができる。
  • 育児休業等の期間中の保険料が免除されやすくなる。

 常勤の公務員であれば共済組合、再任用短時間勤務職員、任期付短時間勤務職員及びアルバイト的な地方公務員である会計年度任用職員であれば健康保険が関係し、それぞれ同様の改正がされます。

こむぞう
こむぞう

会社にお勤めの方にも関係のある話です。どうぞ御覧ください。

 なお、今回の法改正の御紹介は、様々な補償の根拠規定がありますが、健康保険加入者と地方公務員を例として御紹介します。国家公務員の共済組合加入者、国民健康保険加入者等の場合は、それぞれ根拠法令が異なりますので御注意ください。

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傷病手当金の支給のための併給状況資料を提供することになる。

 こちらは、労働者が負う義務ではありません。給付を行う側に労働者情報のやり取りを労働者の同意なく認めるためのものというだけですので、知っておくだけで十分です。

 傷病手当金とは、簡単にいえば、けがや病気で働けなくなった期間に給与が受け取れなくなったとき、通常の給与の3分の2を保険証発行者が支給するお金です。

 健康保険に入っている場合は、健康保険から次のように支給されます。

第九十九条 被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

健康保険法(大正11年法律第70号)第99条第1項

 共済組合に入っている場合で市町村の地方公務員であれば、次のように共済組合から支給されることとなっています。市町村でない場合は、根拠法令こそ異なりますが、やはり同様に傷病手当金が支給されます。

第六十八条 組合員(第百四十四条の二第二項に規定する任意継続組合員を除く。第五項、次条第一項及び第三項並びに第七十条から第七十条の三までにおいて同じ。)が公務によらないで病気にかかり、又は負傷し、療養のため引き続き勤務に服することができない場合には、勤務に服することができなくなつた日以後三日を経過した日から、その後における勤務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

地方公務員等共済組合法(昭和37年法律第152号)第68条第1項

 ただし、公務員の場合は、けがや病気で休むこととなった場合、病気休暇という有給の休暇を取得することとなると思いますので、多くの場合、傷病手当金が支給されません。アルバイト的な地方公務員である会計年度任用職員の病気休暇は、それぞれの自治体のルールによりますが無給だと思いますので、傷病手当金が支給されることがあります。

 さて、実はほかにもけがや病気で休むこととなった場合のうち、そのけがや病気が仕事中によるものがあると思います。その場合は、労働者災害補償保険法(いわゆる労災)、地方公務員災害補償法(いわゆる公務災害補償)等の規定により休業補償という補償がされます。

 しかし、同じけがや病気で二重の補償になるのはよくないので、法律ではどちらか一方が支給されることしか認めていません。

第五十五条 被保険者に係る療養の給付又は入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、移送費、傷病手当金、埋葬料、家族療養費、家族訪問看護療養費、家族移送費若しくは家族埋葬料の支給は、同一の疾病、負傷又は死亡について、労働者災害補償保険法、国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号。他の法律において準用し、又は例による場合を含む。)又は地方公務員災害補償法(昭和四十二年法律第百二十一号)若しくは同法に基づく条例の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には、行わない。

健康保険法第55条第1項

11 傷病手当金は、同一の傷病に関し、地方公務員災害補償法の規定による通勤による災害に係る休業補償若しくは傷病補償年金又はこれらに相当する補償が行われるときは、支給しない。

地方公務員災害補償保険法第68条第11項

 さて、今回の改正は何かというと、この保険証発行者(「保険者」といいます。)側か仕事中のけがや病気の補償側か、どちらか一方の支給しか認めないために、健康保険発行者又は共済組合が仕事中のけがや病気による休業補償がされているか資料提供を求めることができるようになります。

 保険者は、傷病手当金の支給を行うにつき必要があると認めるときは、労働者災害補償保険法、国家公務員災害補償法又は地方公務員災害補償法若しくは同法に基づく条例の規定により給付を行う者に対し、当該給付の支給状況につき、必要な資料の提供を求めることができる。

全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)第1条の規定による改正後の健康保険法第55条第2項

12 組合は、前項の規定による傷病手当金に関する処分に関し必要があると認めるときは、休業補償等の支給状況につき、休業補償等の支給を行う者に対し、必要な資料の提供を求めることができる。

全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)附則第15条の規定による改正後の地方公務員等共済組合法第68条第12項

 この改正は、令和4年1月1日から施行されます。

 資料提供を求められる側として、条例の規定による公務災害補償をする自治体は、資料提供を求められることがありますので、人事給与担当部署は、要チェックですね。

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健康保険に係る傷病手当金の支給期間は、通算で考えることになる。

 こちらは、労働者にとっていい話です。

 傷病手当金は、最大1年6か月まで支給されますが、この支給期間は、現行制度では傷病手当金が支給されない日(傷病手当金の額以上に給与を受け取った日)も含みます。

 しかし、今回の改正で支給開始から通算して1年6か月間となりますので、傷病手当金が支給されなかった日は、1年6か月間に含まれないことになります。

4 傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から通算して一年六月間とする。

全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)第1条の規定による改正後の健康保険法第99条第4項

 この改正は、令和4年1月1日から施行されます。

 ちなみに、共済組合の傷病手当金の支給期間は、もともと通算して1年6か月間なので改正はありません。

健康診断結果を提供しなければならなくなる。

 こちらは、雇い主側の義務です。しかし、労働者情報のやり取りが労働者の同意なく行われるようになるということは、承知しておきましょう。

 健康保険の法的根拠は、こちらです。

 保険者は、前項の規定により被保険者等の健康の保持増進のために必要な事業を行うに当たって必要があると認めるときは、被保険者等を使用している事業者等(労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第二条第三号に規定する事業者その他の法令に基づき健康診断(特定健康診査に相当する項目を実施するものに限る。)を実施する責務を有する者その他厚生労働省令で定める者をいう。以下この条において同じ。)又は使用していた事業者等に対し、厚生労働省令で定めるところにより、同法その他の法令に基づき当該事業者等が保存している当該被保険者等に係る健康診断に関する記録の写しその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定めるものを提供するよう求めることができる。

全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)第1条の規定による改正後の健康保険法第150条第2項

3 前項の規定により、労働安全衛生法その他の法令に基づき保存している被保険者等に係る健康診断に関する記録の写しの提供を求められた事業者等は、厚生労働省令で定めるところにより、当該記録の写しを提供しなければならない。

全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)第1条の規定による改正後の健康保険法第150条第3項

 ちなみに、共済組合の法的根拠は、こちらです。

 組合は、第一項第一号の規定により組合員等の健康の保持増進のために必要な事業を行うに当たつて必要があると認めるときは、組合員等を使用している事業者等(労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)第二条第三号に規定する事業者その他の法令に基づき健康診断(特定健康診査(高齢者の医療の確保に関する法律第二十条の規定による特定健康診査をいう。次条第一項において同じ。)に相当する項目を実施するものに限る。)を実施する責務を有する者その他主務省令で定める者をいう。以下この条において同じ。)又は使用していた事業者等に対し、主務省令で定めるところにより、労働安全衛生法その他の法令に基づき当該事業者等が保存している当該組合員等に係る健康診断に関する記録の写しその他これに準ずるものとして主務省令で定めるものを提供するよう求めることができる。

全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)附則第15条の規定による改正後の地方公務員等共済組合法第112条第3項

 前項の規定により、労働安全衛生法その他の法令に基づき保存している組合員等に係る健康診断に関する記録の写しの提供を求められた事業者等は、主務省令で定めるところにより、当該記録の写しを提供しなければならない。

全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)附則第15条の規定による改正後の地方公務員等共済組合法第112条第4項

 この改正は、令和4年1月1日から施行されます。

育児休業等の期間中の保険料が免除されやすくなる。

 育児休業等をしている期間は、健康保険料、厚生年金保険料及び共済組合の掛金が免除されます。

 通常、保険証と年金の保険料をどこが徴収するかについては、月末に加入しているところで考えますので、保険料の免除についても月末に育児休業等をしているかどうかでその月が免除になるかどうかが判定されます。

 したがって、現行の育児休業等の制度では、育児休業等の期間が月末になく、月の途中で始まり、月の途中で終わる場合は、保険料等は、免除されません。

 しかし、今回の改正で育児休業等の期間が月末になく、月の途中で始まり、月の途中で終わる場合であっても、育児休業等の期間が14日以上あれば、その月の保険料等が免除されることとなりました(全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)第1条の規定による改正後の健康保険法第159条第1項、全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律第3条の規定による改正後の厚生年金保険法第81条の2第1項及び全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律附則第15条の規定による改正後の地方公務員等共済組合法第114条の2第1項)。

 これで、保険料免除のために育児休業等の期間を無理に月末を含めるようにする育児計画をしなくて済むようになりますね。

 この改正は、令和4年10月1日から施行されます。

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ほかにもあります。

 ほかにも、今回の記事では詳しく取り上げませんが、今回の法改正で、令和4年1月1日から任意継続被保険加入者が本人申告でやめることができるようになったり、令和4年10月1日から令和5年3月1日までの間のどこかから一定所得以上(課税所得が28万円以上かつ年収200万円以上等)の後期高齢者医療保険加入者の窓口負担割合が2割に上がったりします。細かな制度改正がありますので御注意ください。

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