ブログ「公務員ってどうなの?」のこむぞうです。
風水害の多い時期になりました。
実は、各種報道で御存じかもしれませんが、結構自治体では被災地への派遣が積極的に行われています。「明日は我が身」ですからね。愛知県でも積極的に働きかけられて、派遣するか、派遣するなら誰にするかというのを迅速に協議して派遣の決定をします。
では、被災地派遣について紹介します。できれば災害発生時の仕事だけはないことを祈りつつ。
被災地以外の派遣については、公務員の職員派遣の記事を見てね!
応急対策職員派遣制度
派遣に当たっては、様々な災害を経て、「応急対策職員派遣制度」という派遣要請の流れが作られています。
細かな資料は、次のとおり
では、この応急対策職員派遣制度について、掘り下げていきます。上記の資料は、見慣れない専門用語で説明されていて分かりにくいので、なるべく分かりやすく説明していきたいと思います。
災害発生前の準備
災害が発生していないときにする準備は、次のとおりです。
- 応援職員の受入れの準備
- 応援職員の対応能力の向上及びリスト化
- 応援職員のための装備
- 災害マネジメント総括支援員又は災害マネジメント支援員の推薦
「応援職員の受入れの準備」は、次の事項等を取りまとめた計画の策定等の必要な準備をします(応急対策職員派遣制度に関する要綱第26条)。
- 庁者全体の応援受入の窓口となる受援担当者
- 応援職員が担う受援対象業務と必要人数
- 各受援対象業務の担当部署における受援担当者
- 応援要請の手順
「応援職員の対応能力の向上及びリスト化」については、突然派遣協力依頼が入るため、いつでも派遣できるようあらかじめリスト化しておくということですね。対応能力の向上は、特にり災証明の発行能力です。火災保険等で必要なり災証明を発行する手続が緊急で必要な業務なので、この能力がある職員が被災直後に最も求められます。私の所属団体では、このリストから派遣協力依頼がきたときに派遣できそうな職員に声を掛け、よければ派遣決定をします。
「応援職員のための装備」は、キャリーバック、保存食、使い捨てカイロ等の装備品です。想定される装備品の例は、応急対策職員派遣制度に関する運用マニュアル<第3版>第7章1に定められています。
「災害マネジメント総括支援員又は災害マネジメント支援員の推薦」については、災害マネジメント総括支援員又は災害マネジメント支援員として総務省が登録するために必要な事務です(応急対策職員派遣制度に関する要綱第22条)。
災害マネジメント総括支援員と災害マネジメント支援員は、総務省が設置した応援職員確保調整本部又は応援職員確保調整本部が決定した対口支援団体(被災市町村の支援を担当する都道府県又は指定都市)が総括支援チームとして被災市町村に派遣するメンバーのことで、定義をすると次のとおりになります。災害マネジメント総括支援員は管理職で、災害対応に詳しく、勤続5年以上の人、災害マネジメント支援員はそのサポートで災害対応ができる人です。詳しくは、上記の災害マネジメント総括支援員等の登録に関する要綱第3条で定められています。
(11) 災害マネジメント総括支援員とは、被災市区町村の長への助言、幹部職員との調整、被災都道府県をはじめとする関係機関及び総務省との連携等を通じて、被災市区町村が行う災害マネジメントを総括的に支援するために、地方公共団体が応援職員として派遣する者として、総務省が管理する名簿に登録されている者をいう。
応急対策職員派遣制度に関する要綱第2条第11号
(12) 災害マネジメント支援員とは、災害マネジメント総括支援員の補佐を行うために、地方公共団体が応援職員として派遣する者として、総務省が管理する名簿に登録されている者をいう。
応急対策職員派遣制度に関する要綱第2条第12号
ちなみに「災害マネジメント」とは、次のとおりです。
災害マネジメントの機能 | 具体的な内容 |
「災害のフェーズ」に応じた災害対応 の在り方に関する知見 | 被災市区町村においては、発災直後の人命救助の段階から被災住民の生活再建の支援の段階への移行に伴い、避難所の運営、家屋被害調査と罹災証明書の交付、がれきの処理、家屋の応急修理、応急仮設住宅の建設等の様々な災害応急対策を順次進めていくことが求められる。このため、これらの各災害応急対策の進め方、ノウハウ・留意事項や、併せて、災害救助法の運用に関する知識が必要となる。 |
災害対策の推進体制の整備や進捗把握 など の管理マネジメント | 被災市区町村においては、例えば、まずは避難所の運営に注力しつつも、同時並行的に、次の段階で必要となる罹災証明書の交付事務や仮設住宅の建設等に対する準備を開始しなければならない。これに対する人的体制として、避難所の運営については、被災市区町村の職員を一定数確保しつつも、基本的には他の地方公共団体からの応援職員を充てることとし、罹災証明書の交付事務や仮設住宅の建設等、実施に当たって企画立案・調整等がかなりの程度求められる業務については、それぞれ被災市区町村の職員を中心としたプロジェクト・チームを編成し、推進する ことなどが考えられる。このため、このような推進体制に関する管理マネジメントの知識・経験が必要となる。また、そのように分担された業務については、遅れを生じることのないよう、被災市区町村の災害対策本部において、逐次進捗状況を把握し、課題が生じた場合その解決策を講じる等のフォローが不可欠である。 |
応援職員の緊急確保に関する 総務省等との 連絡・調整 | 被災市区町村において、それぞれの業務を担当する人的体制を整備するに当たっては、被災市区町村の職員に加え、応援職員も視野に入れた上で、人的体制を計画し、それに応じて応 援職員の派遣を求める必要がある。その際に、応援職員の確保について、対口支援団体による支援では不足し、緊急に全国スキームによる派遣を求める必要が生じる可能性もあることから、総務省等との密接な連絡・調整が可能な体制を構築しておく必要がある。 |
災害発生時のフローチャート
災害が発生したときは、簡単にすると次の流れになります。
- ステップ1被災都道府県が被災市町村の応援職員ニーズの情報収集をする。
- ステップ2被災都道府県が総務省等の関係機関に情報提供をする。
- ステップ3総務省が必要に応じて応援職員確保調整本部を設置する。
- ステップ4応援職員確保調整本部が対口支援団体を決定し、支援に当たらせる。
対口支援団体とは、被災市町村の支援を担当する都道府県又は指定都市のことです。
- ステップ5対口支援団体は、応援職員のニーズ等を把握し、応援職員派遣の調整を行う。
- ステップ6次の団体は、総括支援チームを派遣する。
- 応援職員確保調整本部から協力の依頼を受けた地方公共団体
- 被災市区町村から要請を受けた対口支援団体
- ステップ7総括支援チームは、応援職員派遣の協力依頼に先立ち、被害状況、応援職員のニーズ把握及び災害マネジメントの支援を行う。
- ステップ8
応急対策職員派遣制度に関する運用マニュアル<第3版>第3章によると、次のような図になります。
国も含めると大きな流れになってしまって、行程が多くて分かりにくいですね。ちなみに、市町村の立場から見れば、都道府県、全国市長会、全国町村会等から派遣依頼をもらって派遣を決める、というだけの流れです。
もちろん、こういった流れとは別に派遣することを決めて被災地に派遣することも認められます。
第21条 地方公共団体(被災都道府県内の地方公共団体を除く。)は、第1段階支援及び第2段階支援とは別に、独自に応援職員の派遣を行おうとする場合には、都道府県にあっては全国知事会に、指定都市にあっては指定都市市長会に、市区(指定都市を除く。)にあっては全国市長会に、町村にあっては全国町村会に対しその旨を申し出ること(以下「独自申出」という。)ができるものとする。
応急対策職員派遣制度に関する要綱第21条第1項
派遣制度は、研修派遣(公務出張扱い)
公務員の派遣制度は、様々なものがあります。簡単に分類すると次のとおりです。
- 地方自治法に基づく派遣
- 公益的法人等への派遣
- 研修派遣(地方公務員法(昭和25年法律第261号)第39条の研修を目的とした公務出張)
勤務条件、活用事例等については、こちらの記事を御覧ください。
さて、ではこの応急対策職員派遣制度の派遣はどれに当たるかというと、研修派遣です。
(3) 本制度に基づく応援職員の派遣の形態は、職務命令による短期の派遣(公務出張)を基本とするものであること。
応急対策職員派遣制度に関する要綱第3条第3号
研修派遣は、派遣先にずっと出張しているという扱いです。そういうと、「派遣」じゃなくて「出張」といえばいいといわれてしまいそうですが、この点については同意です。私の所属団体では、この研修派遣という制度が使われてからというもの、地方自治法や公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律のような、もともと制度として用意されている派遣制度が余り活用されなくなりました。これは、これらの法律を根拠とする派遣は、既に給与支払者等が法的に定められてしまっているため、派遣先と派遣元との協議によっては活用し難いためです。
被災地派遣に限らず、派遣される場合は、給与等の待遇についてよく確認しておきましょう。派遣ごとに内容が異なるため、注意が必要です。「あの派遣のときはこうだったから今回も同じ。」と思わないようにしましょう。
被災地派遣の給与
被災地派遣の給与についてです。
派遣先との協議にもよりますが、もし研修派遣であれば変わらないのが原則です。
ひょっとしたら人事評価でプラスの評価がされて勤勉手当や昇給に影響があるかもしれませんが、所属団体によります。
なお、地方自治法第252条の17第1項の規定による派遣であれば、災害派遣手当が派遣先から支給されることがあります。
第三十二条 都道府県又は市町村は、前条又は他の法律の規定により災害応急対策又は災害復旧のため派遣された職員に対し、政令で定めるところにより、災害派遣手当を支給することができる。
災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第32条第1項
第十九条 法第三十二条第一項の災害派遣手当は、災害応急対策又は災害復旧のため派遣された職員が住所又は居所を離れて派遣を受けた都道府県又は市町村の区域に滞在することを要する場合に限り、総務大臣が定める基準に従い、当該都道府県又は市町村の条例で定める額を支給するものとする。
災害対策基本法施行令(昭和37年政令第288号)第19条
派遣終了後は、派遣元に報告
これは、所属団体にもよると思いますが、災害復旧対応という珍しい体験をし、所属団体で災害対応をするときの参考とする貴重な情報ですから、派遣終了後に所属団体でどのような業務を行ったか報告することになると思います。
ちなみに、私の所属団体では、派遣が終わったら管理職の前でスライド資料を使ってどのような業務に従事したか報告会を開催します。
被災地派遣のグッズ
被災地派遣に当たり、持っていった方がいいものがあります。派遣先か派遣元から貸与されるかもしれませんが、次のとおりリストアップしておきますので、どうぞ参考にしてみてください。特にポケットwi-fiは、派遣先からおすすめされたこともあるので、派遣先の仮住まいにないなら、あるといいかもしれません。
- 作業着
- 筆記用具
- 帽子
- マスク
- タオル
- 名刺
- 携帯電話
- 保険証のコピー
- 旅費
- 着替え
- 長靴
- レインコート
- Wi-fi(「縛りなしWiFi」月額2,178円から)
実は被災地派遣の希望者は結構いる。
おまけの話です。担当業務を圧迫するので嫌がられそうなこの被災地派遣ですが、希望者を募ると私の所属団体では結構手が挙がります。話を聞いていると次のような事情かと推測しています。
- 気分転換
- 好奇心
- 使命感
- 派遣先にお客様扱いしてもらえる(例外あり)。
派遣職員本人は、もともと希望しているので「被災地に行かなきゃいけない。どうしよう。」みたいな不安そうな感じではなく、結構気楽な印象を受けますね。
派遣させる人事担当者としては、派遣先への移動手段とその旅費に係る予算の確保、連絡調整等でかなり気が回らなくなっているので随分と温度差がありますね。
何にせよ、せめて派遣が必要なほどの大きな災害がどの自治体にも発生しないことを祈ります。
最後に「自分が被災に遭ったら」
災害に遭った自治体を支援するのがこの被災地派遣ですが、逆に自分が災害に遭ったらどうしますか?
そういうときのために、火災保険は必ず入っておきましょう(おすすめの保険は、こちら「リベ大おすすめサービスのご紹介」の「火災保険」)
しかし、いざ被災して火災保険の保険金を申請しようとも、専門知識が必要な部分も多く、申請しても事故原因などを正しく伝えられないことで、大きな減額やそもそも保険金が一切下りなくなるおそれがあります。
保険加入時は説明を受けてどうすればいいか分かっていても、いざとなるとどう被災内容を説明したらいいか分からないね。
特にマイホームであれば、その被害額は、大きくなります。
そういうときは、火災保険申請サポート「ミエルモ」です!
地震保険の申請サポートもやってるよ!
マイホーム限定のサポートなので、賃貸は、サポート対象外です。御注意ください。
専門家による無料被災調査、保険会社に提出する必要書類の作成及び保険会社への説明を行ってくれます。
手数料は、保険金が下りたときのみ保険金の33パーセントです。
「手数料を支払うくらいなら自分でやる」という考え方もいいと思いますし、できれば手数料を支払わずに済む方がいいのですが、被災して正常な判断能力がないときに火災保険等の申請をして、いい結果が出るかは、不安ではありませんか?
災害は、いつ起こるか分かりません。
被災したとき、多くの問題があなたを襲うでしょう。間違いなく脳の処理が追い付きません。
住まいがマイホームであれば、もしもの備えとして、是非一度お問合せをしてみてください。
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