ブログ「公務員ってどうなの?」のこむぞうです。
令和3年9月1日からデジタル庁が設置されることを始め、個人情報関連の様々な法改正があります。
それに伴い、条例改正が必要になると思いますので、ここで御紹介します。
立法事実(条例の改正理由)
次の法律が施行されることに伴い、必要となります。
- 公布の日 令和3年5月19日
- 施行期日 主に令和3年9月1日
- 公布の日 令和3年5月19日
- 施行期日 主に令和3年9月1日(一部政令で定める日から施行)
さて、それでは、条例改正で必要となる主な情報だけをピックアップして御紹介します。
個人情報の保護に関する法律の一本化(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律の廃止)
まず、次の法律が全て個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号 。以下「個人情報保護法」という。 )に一本化されます(デジタル社会形成整備法第50条及び附則第2条)。
- 個人情報保護法
- 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)
- 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第59号)
個人情報の取扱いの規律に関する官民通じた基本的な枠組みと民間部門の個人情報取扱事業者に対する一般法としての規律を定める個人情報保護法、行政機関(国)の個人情報の取扱いについて定める行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律、独立行政法人等の個人情報の取扱いについて定める独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律。それぞれの法律で役割分担がありましたが、公的部門と民間部門とで個人情報の定義が異なり、国民の目から見て極めて分かりにくく、両部門の間でのデータ流出の妨げになり得るため、これらの3本の法律を一本化することとなりました。
また、条例で定める自治体の個人情報の取扱いについてもこの一本化された法律に全国的な共通ルールを定めることとされます(デジタル社会形成整備法第51条の規定による改正後の個人情報保護法第2条第11項第2号ほか)。
個人情報保護については、国よりも自治体が先に条例で定めて制度化していたため、今まで国と自治体とでどのような個人情報を保護するのか制度がばらばらだったのです。 詳しい経緯については、こちらを御覧ください。
今では当たり前の個人情報保護制度ですが、国が制度化して始まった制度ではないので、全国的に統一することがされていない珍しい経緯になっていますね。
さて、本題です。
まず行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律が廃止されることに伴い、条文中の全ての行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律と独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律の引用を全て改正しましょう。
おおむね定義に関することだと思います。私の自治体では、3つの用語で引用されていました。改正前の引用条項と改正後の引用条項については、次のとおりです。
用語 | 改正前の引用条項 | 改正後の引用条項 |
個人識別符号 | 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第2条第3項 | 個人情報保護法第2条第2項 |
要配慮個人情報 | 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第2条第4項 | 個人情報保護法第2条第3項 |
独立行政法人等 | 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律第2条第1項 | 個人情報保護法第2条第9項 |
施行期日は、令和3年10月29日に公布されたデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律の一部の施行期日を定める政令(令和3年政令第291号)により、どれも令和4年4月1日に決定しました!
つまり、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律と独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律は、令和4年4月1日から廃止されているんだね。
マイナンバー付きの個人情報については、デジタル庁長官(内閣総理大臣)の権限に変更
マイナンバー関係については、これまで内閣府と総務省がそれぞれ役割分担をして担当していましたが、内閣に置かれるデジタル庁と総務省がそれぞれ役割分担をして担当することとなります(デジタル庁設置法第4条第2項第4号、附則第53条及び第56条)
したがって、特定個人情報(マイナンバーの付いた個人情報)の訂正請求を受けて訂正したときは、次のとおりルールが変わります。
第97条 行政機関の長等は、訂正決定に基づく保有個人情報の訂正の実施をした場合において、必要があると認めるときは、内閣総理大臣及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)第十九条第七号に規定する情報照会者若しくは情報提供者又は同条第八号に規定する条例事務関係情報照会者(当該訂正に係る同法第二十三条第一項及び第二項(これらの規定を同法第二十六条において準用する場合を含む。)に規定する記録に記録された者であって、当該行政機関の長以外のものに限る。)に対し、遅滞なく、その旨を書面により通知するものとする。
デジタル庁設置法附則第41条及びデジタル社会形成整備法附則第53条の規定による改正後の行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号)第31条第1項の規定により読み替えて適用する個人情報保護法第97条
ちなみに「行政機関の長等」とは、国の行政機関の長と独立行政法人等のことです(デジタル社会形成整備法附則第53条の規定による改正後の個人情報保護法第63条)
国の行政機関は、保有している個人情報について訂正を請求され、訂正することが決定した場合は、内閣総理大臣等に通知することになります。
なお、このルールは、自治体に直接適用されているわけではありません。しかし、自治体は、次のとおり国の行政機関が講ずることとされている措置の趣旨を踏まえて必要な措置を講ずるものとされていますので、個人情報の訂正決定がされた場合は、国の行政機関と同様に内閣総理大臣等に通知しなければなりません。
第三十二条 地方公共団体は、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法、個人情報保護法及びこの法律の規定により行政機関の長、独立行政法人等及び個人情報保護法第二条第五項に規定する個人情報取扱事業者が講ずることとされている措置の趣旨を踏まえ、当該地方公共団体及びその設立に係る地方独立行政法人が保有する特定個人情報の適正な取扱いが確保され、並びに当該地方公共団体及びその設立に係る地方独立行政法人が保有する特定個人情報の開示、訂正、利用の停止、消去及び提供の停止(第二十三条第一項及び第二項に規定する記録に記録された特定個人情報にあっては、その開示及び訂正)を実施するために必要な措置を講ずるものとする。
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第32条
ガイドラインにも次のとおりしっかり定められています。
地方公共団体においては、番号法第32条の規定に基づき、行政機関等と同様の適用となるよう、個人情報保護条例の改正等が必要となる場合がある。
特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(行政機関等・地方公共団体等編)平成26年12月18日付け個人情報保護委員会(令和2年5月25日最終改正)
さて、ではこれを踏まえて改正すべき条文は、愛知県個人情報保護条例(平成16年愛知県条例第66号)でいうと次のような条文です。
第三十六条 実施機関は、訂正決定に基づく保有個人情報の訂正の実施をした場合において、必要があると認めるときは、当該保有個人情報の提供先(情報提供等記録にあっては、総務大臣及び番号利用法第十九条第七号に規定する情報照会者若しくは情報提供者又は同条第八号に規定する条例事務関係情報照会者若しくは条例事務関係情報提供者(当該訂正に係る番号利用法第二十三条第一項及び第二項に規定する記録に記録された者であって、当該実施機関以外のものに限る。))に対し、遅滞なく、その旨を書面により通知するものとする。
愛知県個人情報保護条例第36条
この条文中の「総務大臣」は、「内閣総理大臣」に改正する必要があります。
この施行期日は、令和4年4月20日に公布されたデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律の一部の施行期日を定める政令(令和4年政令第176号)により、令和5年4月1日に決定しました!
特定個人情報(マイナンバーの付いた個人情報) の提供に関する条項の移動
特定個人情報の提供については、条例で定めればその地方公共団体内部の他の機関に特定個人情報を提供できます(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以下「番号法」という。)第19条第10号)。
いわゆる「内部連携」というやつです。
このルールについて改正されたわけではないのですが、同号は、デジタル社会形成整備法第55条の規定の施行に伴い、番号法第19条第11号に移動します。
番号法第19条第10号を引用している条文がある場合は、改正しましょう。この改正の施行期日は、デジタル社会形成整備法の公布の日(令和3年5月19日)です(デジタル社会形成整備法附則第1条第1号)。
地方公共団体情報システム機構(J-LIS)がマイナンバーカードの再交付手数料を徴収
地方公共団体情報システム機構(通称J-LIS)というのは、マイナンバー(個人番号)を発行したり、マイナンバーカード(個人番号カード)を発行したりする組織です。
今回の改正で、マイナンバーカードの再交付手数料は、自治体ではなく、 J-LISが徴収することとなります。
第十八条の二 機構は、第十六条の二第一項の規定による個人番号カードの発行に係る事務に関し、機構が定める額の手数料を徴収することができる。
デジタル社会形成整備法第55条の規定による改正後の番号法第18条の2第1項
つまり、手数料条例で定められているマイナンバーカードの再交付手数料は、自治体が徴収するわけではないため、廃止する必要があります。
とはいえ、 J-LISだけでは大変なので、次のとおり住所地の市町村に委託されます。結局のところ、住民からしたら別に変わることはありません。
3 機構は、第一項の手数料の徴収の事務を住所地市町村長に委託することができる。
デジタル社会形成整備法第55条の規定による改正後の番号法第18条の2第3項
そのほか、自治体の個人情報保護制度にも個人情報保護法が影響
デジタル社会形成整備法第51条の規定による個人情報保護法の一部改正に伴い、デジタル社会形成整備法附則第1条第7号に掲げる規定の施行の日(令和5年4月1日)からは、個人情報保護法の適用対象に地方公共団体の機関(議会を除く。)を含みます。
自治体から始まった個人情報保護制度は、全国統一基準となるということですね。
こうなると、個人情報の保護に関する条例を廃止する必要があるかも?
なお、この法改正の施行期日の「デジタル社会形成整備法附則第1条第7号に掲げる規定の施行の日」は、政令で定める日とされていましたが、その政令(デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律の一部の施行期日を定める政令(令和4年政令第176号))が令和4年4月20日に公布されたことで決定しました。
また、 開示請求に当たっては、 デジタル社会形成整備法附則第1条第7号に掲げる規定の施行の日(令和5年4月1日)から条例で手数料を取ることができると明文化されます。
第八十九条 地方公共団体の機関に対し開示請求をする者は、条例で定めるところにより、実費の範囲内において条例で定める額の手数料を納めなければならない。
デジタル社会形成整備法第51条の規定による改正後の個人情報保護法第89条第2項
開示請求手数料については、国の行政機関は、政令で定める額を徴収します。開示請求手数料を既に徴収している自治体もあると思いますが、国が開示請求手数料を定める以上、国と同額の開示請求手数料とすることになるかもしれません。つまり、手数料条例の一部改正が必要となるかもしれません。こちらも要注意です。
ちなみに、この法改正の施行期日も、さっきのデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律の一部の施行期日を定める政令(令和4年政令第176号)が令和4年4月20日に公布されたことで決定したんだよ!
改正内容まとめ
以上です。まとめると、最低限改正すべき条例の内容は、次のとおりとなります。
- 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第2条第3項→個人情報保護法第2条第2項(施行期日は、令和4年4月1日)
- 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第2条第4項→個人情報保護法第2条第3項(施行期日は、令和4年4月1日)
- 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律第2条第1項→個人情報保護法第2条第9項(施行期日は、令和4年4月1日)
- 個人情報保護条例のうち訂正した個人情報の提供先への通知について、特定個人情報の提供先は、「総務大臣」→「内閣総理大臣」(施行期日は、令和5年4月1日)
- 番号法第19条第10号→同条第11号(施行期日は、令和3年5月19日)
- マイナンバーカードの再交付手数料の廃止(施行期日は、令和3年9月1日)
- (必要であれば)個人情報開示請求に係る開示請求手数料(施行期日は、令和5年4月1日)
一度にやったらすごい条例改正の量になりそう。
法整備が進み、情報の取扱い(PCスキル)は、今後ますます重要になっていくのではと危機感を感じます。
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