ブログ「公務員ってどうなの?」のこむぞうです。
災害派遣手当のうち、従来「新型インフルエンザ等緊急事態派遣手当」を支給できるよう定めた条例は、「特定新型インフルエンザ等対策派遣手当」に改正する必要があります。
また、その改正は、令和5年9月1日となるおそれが強くなりました。つまり、きっちりやるなら令和5年6月議会に条例案を提出する必要があります。条例審査の担当者及び給与担当者は、是非御覧ください。
そんなに早く条例改正が必要なの!?
難しい改正ではないから、順に説明しよう。
法改正の内容
まずは条例改正の原因(立法事実)となる法改正から御説明します。
- 公布の日 令和5年4月28日
- 施行期日 公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日(令和5年9月1日)。新型インフルエンザ等対策に係る特別交付金及び新型インフルエンザ等に係る起債の特例については、令和6年4月1日
施行期日は、新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(令和5年政令第260号)が令和5年8月14日に公布されたことで決まったよ!
内閣感染症危機管理統括庁が令和5年9月1日の発足というマスコミ報道があったので、予想どおりでしたね。
この新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律が施行されると新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)及び内閣法(昭和22年法律第5号)が改正されます。
条例改正に影響のある法改正の内容
この法改正では、内閣官房に設置する内閣感染症危機管理統括庁、新型インフルエンザ等対策本部長の指示権の発動可能時期の前倒し(緊急事態宣言等よりタイミングを早める。)等の様々な改正がされますが、中でも条例審査担当者及び給与担当者が気にしなければならないのは、新型インフルエンザ等対策特別措置法第26条の8に規定する特定新型インフルエンザ等対策派遣手当が新設されることと同法第44条(新型インフルエンザ等緊急事態派遣手当関係)が削られることです。
- 新型インフルエンザ等緊急事態派遣手当
- 新型インフルエンザ等緊急事態宣言がされた時から新型インフルエンザ等緊急事態解除宣言がされるまでの間において、国、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関がこの法律の規定により実施する措置(新型インフルエンザ等対策特別措置法第2条第4号に規定する新型インフルエンザ等緊急事態措置)の実施のため派遣された職員に対し、支給することができる手当
- 特定新型インフルエンザ等対策派遣手当
- 新型インフルエンザ等対策(新型インフルエンザ等対策特別措置法第2条第2号)のうち、地方公共団体が同法及び感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)の規定により実施する措置であって、新型インフルエンザ等のまん延を防止するため特に必要があるものとして政令で定めるもの(改正後の新型インフルエンザ等対策特別措置法第2条第2号の2に規定する特定新型インフルエンザ等対策)の実施のため派遣された職員に対し、支給することができる手当
ちなみに「新型インフルエンザ等」には、新型コロナウイルス感染症も含まれている言葉だから気を付けてね。
一 新型インフルエンザ等 感染症法第六条第七項に規定する新型インフルエンザ等感染症(第六条第二項第二号イにおいて単に「新型インフルエンザ等感染症」という。)、感染症法第六条第八項に規定する指定感染症(第十四条の報告に係るものに限る。)及び感染症法第六条第九項に規定する新感染症(全国的かつ急速なまん延のおそれのあるものに限る。)をいう。
新型インフルエンザ等対策特別措置法第2条第1号
つまり、緊急事態宣言用の派遣手当から、もっと早い段階で支給することができる派遣手当(特定新型インフルエンザ等対策用の派遣手当)にするということです。
条例改正の内容
とはいえ、改正する内容は、簡単です。
自治体の条例には、「災害派遣手当の支給に関する条例」があるのではないでしょうか。同条例第1条は、例えば次のようになっていると思います。
第1条 この条例は、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第24条第5項及び地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第38条第4項(地方公営企業等の労働関係に関する法律(昭和27年法律第289号)附則第5項において準用する場合を含む。)の規定に基づき、災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第32条第1項(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号)第154条及び新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)第44条において読み替えて準用する場合を含む。)又は大規模災害からの復興に関する法律(平成25年法律第55号)第56条第1項に規定する職員(以下「派遣職員」という。)の災害派遣手当(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第154条において読み替えて準用する場合にあっては武力攻撃災害等派遣手当、新型インフルエンザ等対策特別措置法第44条において読み替えて準用する場合にあっては新型インフルエンザ等緊急事態派遣手当。以下同じ。)の支給に関し必要な事項を定めるものとする。
「災害派遣手当の支給に関する条例(例)第1条
愛知県のように給与条例で定めている自治体は、給与条例を改正してね。
この条例の例でいうと、(新型インフルエンザ等対策特別措置法)「第44条」を「第26条の8」に、「新型インフルエンザ等緊急事態派遣手当」を「特定新型インフルエンザ等対策派遣手当」に改めるだけでOKです!
また、法改正の施行期日が令和5年9月1日であれば、同年6月議会で条例案を提出すべきですが、自治体の議会の性格によっては、「法改正と同時に条例改正もされなければならない!」というところもあれば、「条例で引用する法律の条が移動するという内容だけで条例改正をしなくともよい。」「手当が改正されても支給する見込みがないなら改正しなくともよい。」というところもあるはずです。あなたの自治体の議会の性格から議会に条例案を提出するタイミングを図ってみてください。
ちなみにこむぞうさんの自治体の議会はどうなの?
うちは、「間に合う限りは間に合わせるように」とされているんだ・・・。
がんばってね・・・。
なお、条例改正の施行期日の書き方は、法改正の施行期日の具体的な日時が決まっていない場合(今回でいうなら、施行期日を定める政令が公布されていない場合)は、「この条例は、新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律(令和5年法律第〇〇〇号)の施行の日から施行する。」となります。
法改正の施行期日を定める政令が間に合ったら、その期日を書いてね。
その施行期日を定める政令は、官報で「新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律」をキーワードにして逐一探せば見つかります。根気よくいきましょう!
チェックポイント
条例改正は、「新型インフルエンザ等緊急事態派遣手当」を「特定新型インフルエンザ等対策派遣手当」に改めること及び新型インフルエンザ等対策特別措置法の引用条項の整理だけでOK
そのほかの条例、規則等の改正も忘れずに
新型インフルエンザ等緊急事態派遣手当がなくなり、新たに特定新型インフルエンザ等対策派遣手当にできるため、新型インフルエンザ等緊急事態派遣手当に関する条例、規則等があれば、改正する必要があります。
また、新型インフルエンザ等対策特別措置法から条が削られたり、新しくできたりしているので、同法の条を引用している条例、規則等があれば、改正する必要があります。
自治体が関係するものは、おおむねこのくらいで済むかと思いますが、条例の審査担当等にすぐそうだんしましょう!
災害派遣手当の支給に関する条例の一部改正のまとめ
お伝えすることは以上です。令和5年9月1日施行が見込まれるため、令和5年6月議会に出されるかどうか早めに御検討ください。
条例改正の内容は、簡単です。
- 「新型インフルエンザ等緊急事態派遣手当」→「特定新型インフルエンザ等対策派遣手当」
- 新型インフルエンザ等対策特別措置法の引用条項の整理
- 条例改正の施行期日は、「この条例は、新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律(令和5年法律第〇〇〇号)の施行の日から施行する。」
おおむねこれだけで済みます。
あとは、まだ決定されていない施行期日の問題です。官報で「新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律」をキーワードにして注意すれば、見つかります。条例案の議会提出が間に合うのであれば、施行期日を「この条例は、令和5年〇月〇日から施行する。」と具体的な期日を記載しましょう。
条例改正事務のマニュアル的な記事もあるので、基本的な条例改正等の進め方を知りたい場合は、そっちを見てね。
条例改正事務のマニュアルは、レアです。是非御覧ください。
この記事の作成に当たっては、随分慌てました。もっと前から条例改正の必要性を把握していましたが、新型インフルエンザ等対策特別措置法及び内閣法の一部を改正する法律の施行期日が「公布の日から起算して6月を越えない範囲内において政令で定める日」と定めていたので、「同法が成立しても令和5年10月1日施行くらいだろう。」と見込んでいました。それが、報道では、法改正の施行期日と明らかにせず、この法改正で新たに設置する内閣感染症危機管理統括庁が令和5年9月1日設置で進めていることだけを出すという・・・。驚きました。世間的には重要ではないかもしれませんが、「特定新型インフルエンザ等対策派遣手当」が「新型インフルエンザ等緊急事態派遣手当」の代わりにできることも全く報道されないのは、働く公務員としては、少し切ないですね。
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