ブログ「公務員ってどうなの?」のこむぞうです。
あなたの自治体に悪質なクレーマーっていますか?
その悪質なクレーマーって、情報公開制度を利用していたりしませんか?
今回は、クレーマーとの開示事務体験について御紹介しますので、あなたのクレーマー対策の参考にしてください。
ちなみにクレーマーとのやり取りを分かりやすくするためにクレーマー役を登場させていますが、ロイヤリティフリーの写真素材ですので実際の人物とは異なります。
あえて嫌な感じの表現にしているけど、リヴァイ兵長にうなじを切られてしまえ!(TVアニメ「進撃の巨人」 Season3 6(初回限定版)【Blu-ray】 [ 梶裕貴 ])なんて思っちゃダメだよ?
発言が過激!?
開示請求は、問題が多い。
行政訴訟で最も多いのは、情報公開だといわれています。
これは、情報公開だからそうだというわけではなく、恐らくクレーマーが情報公開の開示請求をして、不満だから訴訟を起こす、というパターンだと思っています。既に問題を起こしそうな人が訴えるのだから自然な流れですね。
なので、もし開示請求がされたら、慣れていない事務ですが、次の点を行って、細心の注意を払いましょう。
- 条例や規則を自ら確認すること。
- 開示事務の窓口担当とよく連携を取ること。
以下は、私が体験したクレーマーとの戦いです。
クレーマーの手法「まずは主導権を握る。」
情報公開においては、次の流れで進みます。
- 開示請求
- 開示決定
- 公文書の開示
クレーマーの手法「まずは主導権を握る。」について、それぞれ私の体験を含めて次のとおり御紹介します。
開示請求
情報公開の開示の場合、まず公文書の開示請求がされます。
この開示請求時点において、まず文書の特定が最も重要です。
ここで特定されないと、決定後になって「開示請求したのはその文書じゃない。」となってトラブルとなりますので自然な流れですね。
なので、クレーマーは、この時点で曖昧な態度を取ります。
この「〇〇」というのはどのような意味ですか?
行政用語なんだからそれくらい調べろ!
〇〇(開示請求者)さんがどのような御理解なのかを聞いているんですよ?
知らないよ。そっちが調べればいいでしょ!
(スマホで検索して)では、この意味でよろしいですか?
それでいいよ!
こんな感じです。
欲しい文書があるから開示請求をしているのに、それを敢えて具体的に示しません。
上記のようにすぐに調べて意味を特定し、文書の特定につなげますが、そもそも言葉は、抽象的なものが多いので、結局求められている文書が特定しきれず、公文書を開示したときに「これじゃない!」とやはり言われます。
「これじゃない!」と言われても、気にせずにいましょう。開示請求者自身が求めるものを伝えてこないのも悪いのです。こうした手法で主導権を握ろうとしてきます。
開示決定
開示請求を受けて公文書として開示できるのであれば、開示決定通知書というものを開示請求者に送ります。その開示決定通知書には、いつ、どこで開示するかが決まっています。
なので、開示決定通知書を作成する前に、いつ、どこで開示するかを開示請求者と調整する必要があります。
私の所属団体の事例では、電話で開示請求者と連絡を取るわけですが、このクレーマーは、自宅の電話しか示さず、スマホを持っているのにスマホの電話番号を教えません。外出しているからなのか自宅の電話にはほぼ出ないので、留守電に入れることになりますが、留守電に用件を記録したのに留守電に入っていないと主張してきたりします。留守電に入れた内容が分かるのも管理するのもこのクレーマーなので困ったものです。いや、もう長年似たようなやり取りしてるんだから、連絡を待っているならスマホの電話番号を教えてくれればいいでしょうに・・・。
ちなみに、連絡が取れなくていつまでも公文書を開示する日を決めさせないようにしてくることもありました。
どこの自治体でもそうかもしれませんが。私の所属団体の条例上、開示決定は、開示請求の日から起算して15日以内にすることとされています。
私が受けたわけではありませんが、このクレーマーとはいつまでも連絡が取れなかったので、公文書の開示日を仮に設定し、後から協議して変更できることを記載した開示決定通知書を送付したものの「その日は都合が悪いと言っているのに都合の悪い開示日を指定してきた!」と文句を言ってきています。
もちろんですが後から開示日を協議して変更できると開示決定通知書には記載されているわけですから日程変更は可能です。これも主導権を握ろうとする行動ですね。都合の悪い日を指定しているのは、公文書を開示する会議室がその日程でしか予約できなかったからでしょう。気にしてはいけません。
公文書の開示
さて、いよいよ公文書の開示です。
私は、開示決定通知書に書いてある開示場所で開示時間になったらいつでも開示できるよう待機していました。しかし、従来は、どこにも案内されてませんが、開示請求担当窓口に集まって、そこから開示場所に一緒に移動するようです。開示請求担当窓口とベテラン開示請求者のクレーマーは何の案内文書がなくとも把握していたようですが・・・いや、そんなどこにも定められていないルール、知りませんわ・・・。
開示請求者の方がこちらでお待ちです。
と開示場所にいる私に連絡が入り、私は開示請求担当窓口に向かいました。
やり方が変わったのか?実施要領はどうなっている!?
と、開示請求担当窓口が責められることになりましたが、ここで時間を取られると会議室を確保している時間がなくなるため、私が割って入りました。それでもこのクレーマーは折れず、結局開示の時間から15分遅れました。
これを御覧の皆さんが開示請求者であれば、どうでしょう?ここで貴重な時間を使いますか?
しかし、このクレーマーにとっては、円滑に進んでいない点を責めて主導権を握る手法の一つです。ここから自分を優位に進めようとしていると思われます。相手のテクニックだとわかっていれば、「この人に悪いことしちゃったな」なんて思う必要はありません。
クレーマーの手法「新たに追求したい話題探し」
開示する公文書と関係ない話もしてきますが、これは、新たに追求したい話題を探す行為です。
場合によっては、新たな開示請求がされます。これについては、
基本的に次のような一般論を聞いてきます。
- それぞれの職員の職の序列、役割等
- 公務員制度の説明
- 文書の取扱いのルール
こうした一見開示した公文書の説明ではない話をされても、答えられるものを答えないことはできませんので、後々の負担が増えることは覚悟の上で、淡々と答えましょう。そのために、職員として当然知っているべきことであればあらかじめ調べ、答えるべき担当が別にいるのであればその担当を紹介しましょう。
クレーマーの手法「根拠を求めて職員対応の問題点を探す。」
個人情報の開示の場合は、個人情報の本人かを確認した上で個人情報を開示します。したがって、まず本人確認がルールとして必要とされています。
個人情報の開示に当たりまして、本人確認書類を拝見させていただいてよろしいですか?
何で本人確認が必要なんだ。どこに書いてある?
(そもそもこのクレーマーは、常連なので本人確認が必要であることを説明されなくとも知っています。まぁそもそも本人確認をせずとも常連なので本人であることは周囲の誰もが承知しているのですが・・・。)
〇〇市個人情報保護条例第16条第2項です(誰かにアドバイスを受けたわけではありませんが、調べておいてよかったとほっとしました。)。
何?何だって?
〇〇市個人情報保護条例第16条第2項です。
・・・(メモを取る。)
↑危なかったです。これで根拠が分からないと「何でそんなことも分からないんだ!?」「これは法律問題なんだよ!根拠も分からないのに対応されちゃ困るんだよ!」等と延々と責め立てられ、場合によっては裁判でその自治体の心証を悪くして優位に立つ材料にします。長々と拘束された挙句に裁判で負ける材料になったら負担が大きくなるところでした。
クレーマーの手法「話のすり替え」
話をすり替えてくることがあり、本来の用件を解決する方向に進みません。
(開示された文書を見て)以前別件で開示された文書で修正がされていた。決裁文書なのに直していいルールはどうなっているんですか。
(ちなみに「決裁文書」とは、組織として文書を報告したり、これから動こうとしている事務について許可する権限のある人がOKを出した文書のことです。)
ルールはありません(私の所属で答える内容ではありませんが、答えないと話が長いので職員として当然知っている内容として答えました。)。
は?ないんですか?
はい。ありません。
じゃあ直すときは、どういう方法で直すんですか。
決裁権者と話をして、よければ訂正で直します。重要な文書であれば改めて決裁を取り直します。
じゃあ重要な文書というのはどういう場合ですか。
そのままでは説明責任が果たせなくなる場合です(これが正しいかは微妙ですが、このときはいい言葉が浮かびませんでした。)。
それじゃあ〇〇課のときはどうして直されたんですか。
他の課のことについては答えることができません。その組織で決めるべきことです。
私はそういうことを言っているんじゃないんだよ!一般論で聞いているんだよ!
一般論であるならば、組織としてその訂正の意思統一がされているなら問題ないと考えます。
じゃあこの〇〇課の訂正は、よかったっていうの?
他の課のことについては答えることができません。
私は一般論について聞いているんだよ!何を言っているんだ!
↑もうお気づきかもしれませんが、「一般論」といいながら話をすり替えて「個別論」に話を持っていこうとしています。この後、同様のやり取りが続きます。
長い!
クレーマーの手法「懲戒処分にしろ!」
クレーマーは、気に入らないと、「こいつを処分してくれ!」と言ってくることがありますが、気にせずに堂々と職務をしてください。
どこの自治体もおおむね同じですが、懲戒処分は、次の流れとなっています。
- まず任命権者(市町村長、教育委員会等)が懲戒審査委員会という懲戒処分にすべきか、するならどれくらいの処分が妥当かを審議する委員会に意見を求める(諮問)。
- 懲戒審査委員会が懲戒処分にすべきか、懲戒処分にするならどれくらいが妥当かを任命権者に伝える(答申)。
- 任命権者が懲戒審査委員会の答申を踏まえ、決定する。
つまり、懲戒処分は、クレーマーが決めることではありません。もちろん、懲戒処分になるかどうか、なったかどうかを答えることもしなくていいのです。
「こいつを処分してくれ!」と言われても、「それは組織が決めることですのでお約束できません。」「処分するかどうかは組織が決めることですので回答しません。」と答えましょう。
大丈夫です。きっとそのようなクレーマーであれば、周囲の職員があなたが全て悪いわけではないことを見てくれています。何かしらの不手際等について謝ることになるかもしれませんが、ちゃんと一般住民に対して当然すべき接し方であれば、問題となることはありません。
ほかにもいろいろあります。
以上に挙げた体験談は、ほんの一部です。
職員の説明のあげ足を取ったり(特に管理職のあげ足を取って、取ったあげ足からその自治体の対応ミスを裁判で使います。)、自分の意に沿わないことを言う職員は「気に入らない」「この職員はおかしなことをいう。」「この職員のせいで話が進まない。」といってメンバーチェンジを要求したりして優位に進めようとしてきます。こういうときは、組織として誠実に対応することを主張して、相手の要求を正直に受け入れないようにしましょう。組織としてちゃんと対応するのであれば、それがどの職員であっても問題ないはずです。
また、「開示が決定しているのであれば開示決定通知書を送る前にあらかじめ連絡するようにしろ。」等といった余計な負担を増やそうとしてきたりしますが、断っても支障のないものであれば、断ってしまいましょう。例えば、この開示決定通知書に開示決定を伝える行為は、開示決定通知書が届けばわかることですので、そのようなルールを決めていないのであれば要求どおりにしなくても問題ありません。
この悪質なクレーマーへの対策をこちらにまとめましたので、悪質なクレーマーに悩まれる方、興味んのある方は、是非御覧ください。
忘れてはいけないのは、これは、住民のほんの一部
思わず忘れてしまいそうになりますが、こうしたクレーマーは、住民のごく一部です。
多くの住民は、そんなに声高に主張しません。皆さんでもそうではないでしょうか?貴重な時間を割いてわざわざ役所に文句をいうことなんて、そうありませよね。中には優しい言葉をかけてくれる方もいますので、ここは勘違いしないようにしたいです。
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